トゥーリはやはり猫だけあって、ワイルドだ。猫じゃらしに夢中なのはもちろんだけど、そのじゃれ方を見たら、多くの人はかなり引くと思う。
やっぱり彼女は、ライオンとか豹の血族だと思う。
猫じゃらしを発見したら、どこからともなくやってきて臨戦態勢に突入する。すでに口を開けているのは、その前に遊ばせすぎて疲れているせいもあるけれど…。
絶対、離さないもんね ! 全身で猫じゃらしをホールドするトゥーリ。この技を、猫固めと呼んでいる。
トゥーリが、夜にこの野獣モードへ突入すると、その後もしばらく興奮状態が続く。猫じゃらしでさんざん疲れているはずなのに、部屋中を欽ちゃん走りであちこちぶつかりながら大疾走する。
すんません、姉さん。日当りがよい窓辺でダラっとしていただければ…。
この後に訪れる試練を知る由もない、いつもの「ねえ、ねえ、なにしてんの? 」顔
週末はじめてトゥーリを健康診断に連れて行った。
いつものように猫じゃらしとオヤツでキャリーにおびき寄せて彼女を入れる。初めて外に連れ出したときみたいに恐怖で震えることはなくて、最初はオドオドしていた。でも、しばらくしたらキャリーのなかから外界を観察する余裕がでてきたみたいだ。
はじめての獣医では、お尻に体温計を入れられか細い悲鳴を発していた。うーん、人間だってそれは嫌だよね。
耳の掃除と爪切りもしてもらった。さすがに爪切りは嫌だったみたいで、看護婦さんの指を噛もうとしたので、首にエリザベスカラー(エリマキトカゲみたいなやつ)を装着された。
それにしても、今回トゥーリの一面が少し理解できた気がする。結構、獣医ではいろんなことをされたけれど、爪切り以外は割とされるがままだった。自宅でぼくが同じことをしようものなら、絶対に噛んで逃走するだろう。
看護婦さんに「いい子ねぇ。あら、緊張して汗かいている」と言われていた。こんなに人間にされるがままでじっとしていた彼女の姿にぼくが驚いた。知らない人だと緊張のあまり、固まってされるがままということだろうか。最初に彼女を抱いたときもそうだった。それは心を開いているというより、緊張で動けなくなっているという感じだった。
診断結果は、いたって健康とのこと。よかった。ただし、アメリカンカール特有の折れた耳は、耳掃除がしづらい。薬をもらったので、それを耳の内側に塗布するべく、彼女と格闘せねばならない。看護婦さん曰く、「すごい耳毛ねえ」とのこと。たしかに、おじいさんみたいだ。
明日は晴れるかな?
パンを作ってみた。
牛乳にバターを入れて、人肌程度に温める。ぼくは牛乳ではなく、豆乳で試してみた。そして、そこに強力粉、イースト菌、塩、砂糖を投下し、軽くこねる。
次に一次発酵。イースト菌の活動促進のため、電子レンジで微妙に温めてから、あとは十数分ほど自然放置。ふんわりと膨張したパン生地を分割して、食べやすいサイズに加工。ゴムべらがなかったので、スケッパーで代用してみた。
写真に映っているハケは、丸める作業と併せて強力粉を生地表面に打ち粉するため。
次に二次発酵。乾燥しすぎないように、キッチンタオルを湿らせて、キッチンペーパーの上からかぶせる。
二次発酵を経て、最後はオーブンで焼き上げる。全体の行程としては1時間くらい。家事を行いながら作業するとちょうどいい感じだろうか。
オーブンで焼き上げると、とても良い匂いが部屋に充満する。
食べてみると、自分で言うのもなんだけど、美味である。これはハマりそうだ。
ダマになっていたら嫌だなと思っていたけれど、大丈夫。焼きたてパンにジャムをつけずにバターだけで食する。一緒に美味しいコーヒーや紅茶が飲みたくなること請け合い。
トゥーリは猫じゃらしに夢中だ。
猫じゃらしがないときには、ぼくの指を猫じゃらし代わりに狙ってくる。猫じゃらしを使って、何度遊んであげても飽きることがない。
トゥーリは子猫なので自分の限界を知らない。疲れてしまわないか心配で、途中でやめると、遠くの物陰に隠れる。それでゲームが終わりだと思ったら大間違い。物陰からちょこっと顔を出す。そして、視線だけ送って「ねえ、ねえ、早く猫じゃらしをパタパタさせて。ここから狙ってみせるから」と意思を伝えてくる。
猫じゃらしへの集中度たるや、すごいものがある。もてる力のすべてを出しきって猫じゃらしと戯れている。
うにゃー(集中力を高めて)……
ナァーッ!真剣白刃取りか!
トゥーリはずっとケージ飼いだったので、ケージのほうが落ち着く子だ。ということで、部屋に来てからは、毎日少しづつケージより出す時間を長めに取りながら、外界に慣れさせている。
最初、ケージから出した瞬間に猛ダッシュをして、ぼくをびっくりさせたものだ。コーナーを曲がりきれず滑るのがご愛嬌。そんな彼女はしっぽを太くさせ、背を反らせると体毛をぶわっと膨らませてから疾駆する。猫のボディランゲージ辞典で調べると、「強気」モードだそうだ(笑。
このよくわからない強気は何なのか。たぶん、野生の名残で小動物を狙っての習性かもしれない。ターゲットがはっきりしないが、彼女の頭のなかに仮想敵がいるのだろう。ケージから出るたびに、最初は一定の円周をぐるぐる駆け巡っていたけれど、最近は冒険の範囲を拡大している。
今ではトゥーリは、ぼくの後をついてきていろいろなものの匂いを嗅いでいる。ぼくを怖がることはないけれど、手を差し出すと、びくっとして行ってしまう。彼女はぼくとどう接していいのかわからないみたいだ。
むしろ、ケージ越しのほうが体をスリスリしてくるので、人間は好きだけれど、境界越しで愛されるほうが慣れているのかもしれない。
今後は、なるべくぼくの傍でくつろいでもらえるよう、にゃんとか作戦を練ってみたい。