トゥーリは猫じゃらしに夢中だ。
猫じゃらしがないときには、ぼくの指を猫じゃらし代わりに狙ってくる。猫じゃらしを使って、何度遊んであげても飽きることがない。
トゥーリは子猫なので自分の限界を知らない。疲れてしまわないか心配で、途中でやめると、遠くの物陰に隠れる。それでゲームが終わりだと思ったら大間違い。物陰からちょこっと顔を出す。そして、視線だけ送って「ねえ、ねえ、早く猫じゃらしをパタパタさせて。ここから狙ってみせるから」と意思を伝えてくる。
猫じゃらしへの集中度たるや、すごいものがある。もてる力のすべてを出しきって猫じゃらしと戯れている。
うにゃー(集中力を高めて)……
ナァーッ!真剣白刃取りか!
トゥーリはずっとケージ飼いだったので、ケージのほうが落ち着く子だ。ということで、部屋に来てからは、毎日少しづつケージより出す時間を長めに取りながら、外界に慣れさせている。
最初、ケージから出した瞬間に猛ダッシュをして、ぼくをびっくりさせたものだ。コーナーを曲がりきれず滑るのがご愛嬌。そんな彼女はしっぽを太くさせ、背を反らせると体毛をぶわっと膨らませてから疾駆する。猫のボディランゲージ辞典で調べると、「強気」モードだそうだ(笑。
このよくわからない強気は何なのか。たぶん、野生の名残で小動物を狙っての習性かもしれない。ターゲットがはっきりしないが、彼女の頭のなかに仮想敵がいるのだろう。ケージから出るたびに、最初は一定の円周をぐるぐる駆け巡っていたけれど、最近は冒険の範囲を拡大している。
今ではトゥーリは、ぼくの後をついてきていろいろなものの匂いを嗅いでいる。ぼくを怖がることはないけれど、手を差し出すと、びくっとして行ってしまう。彼女はぼくとどう接していいのかわからないみたいだ。
むしろ、ケージ越しのほうが体をスリスリしてくるので、人間は好きだけれど、境界越しで愛されるほうが慣れているのかもしれない。
今後は、なるべくぼくの傍でくつろいでもらえるよう、にゃんとか作戦を練ってみたい。