先日のSyndicateで私が参加したトラック「Stand-Alone Journalism and the New Editorial Syndication Market」の講師を務めたChris Nolan氏は著名ジャーナリストで20年の経験をもつベテランだ。
実はこのトラックの参加者は少なく、そのなかにダン・ギルモア氏(『ブログ 世界を変える個人メディア』の著者)がいて、講師のNolan氏を紹介するというハプニングがおきた。
Nolan氏の運営するSpotOn.comは彼女を含む6人のプロフェッショナル・ライターが執筆する政治についてのオピニオン色の強いウェブジンだ。
この試みは、書き手によるブランド媒体の中抜きを意味する。いつかその日が来るだろうと私なりに予測はしているが、このSpotOn.comが、もしかしたら第二のNew RepublicやNewYorkerのような有力メディアにならないとも限らない。すでに第一世代としてはSalon.comやSlateのようにブランドとなったニュース・サイトが存在している。
Nolan氏は、プロとアマチュアの決定的な差が生じるのはレポート(報道)だと言っていた。オピニオンやニュースからの転載はブロガーたちの十八番(おはこ)だが、一次情報の伝え方には訓練が必要だからだ。SpotOn.comへの寄稿と既存メディアへの寄稿の違いは、ウェブ向けではもっと対話型の文体を用いていると述べていた。
SpotOn.comのようにプロによって構成されるオンライン・メディアもあれば、一方でアマチュアたちによる、草の根からつくられるCitJ(シチズン・ジャーナリズムの略称)もその推移が注目される。
韓国のOh My News!はCitJとしては国際的な草分けであり、韓国内では既存マスメディアと肩を並べるほどの存在感を誇示している。識者 によれば、Oh My News!の成功は韓国人の国民性とインフラに根ざし、きわめて特殊なものとも。
私もNolan氏にOh My News!についてどう思うかを尋ねてみたが、彼女はそれについては懐疑的だった。米国でもOh My News!と同じものをつくろうという動きはあるようが、国土も広く多様な価値観を背景とする米国ではうまくいかないのではないかという趣旨のことを述べていた。
日本ではすでにJAN JANというCitJが存在しているが、米では前出のダン・ギルモア氏自らがcitmedia.org.というメディアを計画中の旨を発表している。
また、エンターテインメントに絞ったTexas Gigzのような試みや、Backfence.comはどうなるのだろうか。今後、政治的なもの以外にもニッチな分野におけるCitJは多数登場しそうな予感がする。
(参考 : Poynter Online)
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