米国の経済新聞「ウォールストリート・ジャーナル(以下、WSJ)」が、今年一月より紙面を刷新した。
業界紙によると、新しくなった同紙は版型を変更。紙幅を業界標準の十二インチから短縮し、ニュース記事も圧縮。つまり、紙面のリストラに及んだのだ。
これで同紙は、通勤のビジネスマンらが持ち運びやすくなり、記事の見出しなども、読みやすいよう工夫されたという。
WSJのウェブ版は、七十八万五千人もの有料購読者を抱え、無料版の読者もあわせると、かなりの数にのぼるという。米国で、もっとも閲覧されているウェブサイトの一つである。
今回、紙面がリストラされた分、ウェブ版では紙面よりも、さらに詳しい記事を載せていくようだ。
一方、「ヴォーグ」などのファッション雑誌で知られる米国の雑誌社コンデ・ナストは、今年創刊予定のビジネス誌「ポートフォリオ」のウェブ版を昨年に立ち上げた。
こちらは、まだ刊行されていない雑誌のウェブ版が、紙に先がけてお披露目されたわけで、いわゆる「ティザー(じらし)作戦」である。ウェブ版の記事は短くし、雑誌に長く詳しい記事を載せていく方針と聞く。編集長には、WSJから迎えた人材を充てるという。
WSJの場合、紙面刷新によるコストカットが期待されており、これは減少する新聞の売り上げに対する施策でもある。
しかし、「ポートフォリオ」はもともと発行部数が少ないし、手間とコストがかかっている。すなわち、同じ紙媒体でも、もはやウェブに足場を移しつつある新聞と、希少性ゆえにウェブと併用して価値を高めたい雑誌、という構図が見え隠れするのだ。
(上記の文章は、共同通信が各新聞社に配信する「本の街角」というコラム記事として07年2月末日に寄稿したものです)
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