以下、先月末に共同通信で配信された私の寄稿記事です。
よもや米国アップル社の携帯音楽プレイヤーiPodを知らぬ人は少ないだろう。このiPodは、インターネットから好みの楽曲をダウンロードして、それを持ち運ぶことができるのだが、それら楽曲を販売するウェブサービスもアップル社
が手がけている。名前をITMS(アイチューンズ・ミュージック・ストア)という。
実はこのITMSでは、楽曲だけでなく、本が買えることはあまり知られていない。
その本とは、いわゆる読むための本ではなく、朗読されたデジタルコンテンツであり、聴くための本なのだ。呼称はオーディオブックである。たとえば、筆者の会社も以前、タレントの稲川淳二氏が語る怪談をオーディオブックとしてITMSで発売し、かなりの好セールを記録したことがある。
このオーディオブックだが、日本では有名落語家の高座や英会話教材がすでに定番のコンテンツとして販売ランキングの上位を占めている。最近では、ベストセラーになった書籍『プラトニック・セックス』を著者の飯島愛氏自らが朗読したも
のが販売されるなど、大手出版社もITMSのユーザーに秋波を送りつつある。
米国ではもともとカセットブックの文化があり、それなりの市場を形成してきた。かつてはカセットテープに収録されたものが、技術革新により、携帯音楽プレイヤーで持ち運びできるオーディオブックに進化したのだ。
実はこのオーディオブックをITMSで販売しているのはアップルと契約を結んだ米国のベンチャー企業オーディブルである。創業者が作家というこの企業は、本国ではニューヨークタイムズなどの新聞記事を朗読したものが定期購読できるサ
ービスも行っている。オーディオブックならぬ、オーディオ・ニュースペーパーだ。先日、アップル社は携帯電話を発表したが、いずれオーディオブックも電話で聴くものになるかもしれない。
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