本記事は先月末に共同通信で配信されたコラムの再録です。
携帯を使って、自分の言葉で大勢の読者に語りかけようとする人々が急増している。文学への関心は枯渇したのではなく、むしろメディアを変えて、激しく表出しているように思える。
万年筆からワープロへ、近年にはPC、そして2.2インチのスクリーンの前で、自分の内面からふつふつとわく言葉を、親指で入力する人々が次々と現れているのだ。
携帯向け日記作成サイト「魔法のiランド」には、70万点を越える小説が収蔵されている。ランキングで上位になった作品は出版され、ベストセラーにもなった。プロ作家のハードカバー小説がなかなか初版部数をさばけないのを尻目に、破竹の勢いだ。
この熱い分野を開拓しようと、携帯小説に賞が設けられている。「日本ケータイ小説大賞」や「ケータイ文学賞」である。前者はスターツ出版、魔法のiらんど、毎日新聞の共催。後者は、オンブックという電子書籍出版社とソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)との共催による。
映画会社として、携帯でのコンテンツ配信にいちはやく取り組んできたSPEデジタル・ネットワークス部門のバイス・プレジデントを務める福田淳氏に、筆者は賞創設についての話を聞いた。(このデジタル・ネットワークス部門は4月以降、別法人として独立)。
福田氏は、「携帯を筆記具だと思う世代が、新しい作り手ではないか」と述べる。「新しいメディアには、新しい作法がないとダメ。それ以外は既存コンテンツの二次使用でしかない。新しい作法が分かっている編集者と作家が、新しいメディアをつくるべきだ」
出版人は携帯小説の質を問うが、むしろ、小説の市場が広がった現状を歓迎すべきだろう。携帯文学はまだ、端緒に就いたばかりなのだから。
小林さん
ケータイ文学賞をとりあげてくださり、ありがとうございます。ケータイ文学の中から赤川次郎が生まれるか、松本清張が生まれるのか不明ですが、そこに読み手がある限り、継続して書く作家も存在すると思うのです。ですから、一過性のブームが去った後も地道にやる予定です。
来月から「ケータイ文学賞Vol.2」を開催いたします。
投稿情報: 福田淳 | 2007/06/24 12:08
福田さんのお話をお伺いして、2.2インチのディスプレイとそこにおける新しい表現形式の可能性を見直しました。
自分も最近は携帯ばかり使っているので、なんとなく、新しいデバイスのなかでの「呼吸」のようなものがわかってきたような気がします。
…と、こんなこと書いている時点で、まだそのヘビー・ユーザーじゃないかもしれませんが。
今後のご健勝をお祈りしております。
投稿情報: 小林弘人 | 2007/06/29 18:03