米の広告代理店ZennithOptimediaの観測によれば、全世界の雑誌出稿に対する広告費は、2010年にはオンラインメディア(インターネットやモバイル)への出稿費に抜かれるだろうとのこと。
同社のスポークスマンによれば、これまでのオンラインメディアに対する出稿費の伸び率から、2008年にはラジオへの出稿費を、そして2010年には雑誌広告を抜き、全広告費の11.5%をオンラインメディアが占めるという。
一方、日本では電通総研が今年の4月に、2011年にインターネット広告費は7500億円の規模に達するであろうという予測を発表。2006年のインターネット広告費は3630億円(前年比129.3%)なので、あと数年でほぼ倍になるという予想だ。
ちなみに、電通総研が今年2月に発表したリリースによれば、2006年度の雑誌広告費は3,877億円(前年比98.5%)であり、おそらく今年(2007年)でインターネット広告費が雑誌への出稿費を上回るという推測が成り立つ。
私はそれを株価のチャートに倣い、雑誌とネット広告費のデッドクロス(雑誌にとっての)と呼んでいるが、クロスポイント出現以降、完全に両者の明暗がくっきりとするだろう。
また、経済産業省の調査もさらにそれを裏付けるかたちとなっている。
同省によればインターネット広告費は毎月2桁台の伸び率を見せていて、雑誌に関しては微減。2007年の四半期ごとの調査によれば、雑誌全体の項がないため判別できないが、新聞広告費をみると、インターネット広告費の増加率と減少率は完全に逆転してしまっている。
同省の別調査における広告費以外のインターネットにおけるITサービスの市場予測ともなると、さらに強気だ。
2006年の2100億円(*出稿費ではない)から、2011年には7500億円にITサービス市場は拡大すると予測している。そのうち5500億円が検索関連(!)とのこと。
各調査機関の思惑や誤差を差し引いて、これらの数字を眺めてみると、改めて紙メディア(雑誌・新聞)とインターネット・メディア(オンラインメディア)におけるパラダイムシフトは「すでに起きてしまった」と言っても過言ではないだろう。
今年、米フェニックスで開催された「ANA」(Association of National Advertisers)のカンファレンスでは、マイクロソフトCEOのスティーブ・バルマー氏が「すべてのメディアは10年でデジタル化する」と予見し、スピーカーとして登壇したアル・ゴア氏もテレビにおける広告の未来に疑義を(いまさらながら)呈した。
そんななか、BtoB紙の編集者、Ellis Booker氏によるコラムのなかで、ANAのスピーカーでもあるIBMのMatt Preschem氏から聞いたという話が印象的だった。
「もし、あなたがメディア企業を経営しているとしたら、紙の出版事業が存在し続けることはとても明快だ。しかし、大きな成長の機会はデジタル化にある」(Preschem氏)
同氏はパラダイムシフトの一つは、PR、広告、出版社といったコミュニケーションを生業とする企業のビジネスモデルについての抜本的な挑戦とも説く。
紙は残るが、そのままの規模を維持できるというわけではない。
…多くの出版社にとって、課せられた史上最大の発明は、新刊本の企画ではなく、ビジネスの再構築であることは間違いない。
sources :
世界のインターネット広告費が2010年に雑誌のそれを上回る : TimesOnline
ZenithOptimedia
電通総研 : その他研究レポート(各種調査結果)
経済産業省 : 特定サービス産業動態統計調査
経済産業省 : 新たなIT市場の現状と展望について(リンク先PDF)
ANA
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