思うに、デジタル化はランキングや人気投票により、文化の均質化を加速させる反面、オルタナティブなシーンをさらに深化させるといったふたつの側面を併せもつように思える。
たとえば、ベストセラーリストに基づき、さらにベストセラーが動き、どこもしかしこも似たような本が溢れるという点。一方で、これまで知られることがなかった出版物がブログや掲示板などから火がつき、マスメディアがそれを取り上げるといった構図がある。
ニューヨークタイムズ紙の書評を担当し、音楽雑誌SPINにもかかわっていた36歳のダグ・パーカル氏が立ち上げた書評サイト「LitMob.com」が熱い注目を集めている。
LitMob.comは、多くの書評が長文のため、新規読者から敬遠されていることに目をつけて立ち上げられた、ブログ時代のレビューサイトといえよう。
特徴としては、まず書評が短い。簡単に本の特徴と作家についての記述がまとめられているが、中身はけっして軽いわけではないこと。ほかに、インディーズ系ミュージシャンが選ぶ本や全米の各地域書店が選ぶ本のレビューも掲載される。
どうやらフリーのレビュアーを何人か雇い、プロの編集長の目を通じ、掲載されるという流れのようだ。
詩のジャンルも設けられ、全体の傾向としてはアンチ・ベストセラー・リスト的な気骨さも感じられる。ロングテールはそれまで埋もれていた本を発掘したかもしれないけれど、それをさらに専門的に取り扱う書評レビューサイトというのは、なかなか興味深い。
すでに出版パーティーを共催するなど、ウェブ以外でも話題を集めるLitMobはテイストフルなウェブ・メディアだと思う。大手新聞が書評欄をリストラしていくなかで、このようなメディアが存在感をもつことは可能だろうし、中〜長期において、換金化も十分にアリだろう。なにしろ、ウェブメディアはローコスト・オペレーションとニッチ・ターゲットがその最大の武器なのだから。
Doug Perkul氏のインタビュー:Book Blogging
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