米国WIRED誌編集長のクリス・アンダーソン氏が提唱したロングテール理論はすでに広く知られていますが、ロングテール理論は結局、大きなトラフィックを集められる寡占的リテールでないと実現力がない気がします。アマゾン、iTunes、グーグル然り…。
そして、従前より活況を呈しているハイパーローカルなメディアビジネスは、一カ所でやっていくよりもビジネスとして成功させるためには、このロングテール理論を商品ではなく各地域に落とし込むのがよろしいかと。
つまり、ローカル情報検索の総元締になる米国Marchex社のように、全米のあらゆるエリアのあらゆる分野のビジネスを縦割りにして、そういった検索サイトをすべて束ねてしまえといったモデルです。(Marchexはニューヨークの医者だけとか、アトランタのマニキュア屋だけとか業態&地域別ディレクトリー・サービスを膨大な数運営しています)
わたしはこれをロングカーペット理論と、勝手に命名しております…
前にも取り上げた画期的な地域新聞サービスPrintedBlogなどは、一カ所でやっていても僅かしか儲からなさそうですが、ばかでかい絨毯を全米に敷いて、そこで同じモデルを稼働させたら、その絨毯の上には小銭がたくさん入るかもしれません。その後に絨毯を巻いて小銭を回収すれば日銭には困らないし、総額としてはそこそこいくでしょうね。
ということで、実はハイパーローカル・コンテンツはユーザーへのリーチが高まり、コンバージョンも高くなる一方、逆にそれに対する広告費もダウンサイジングしてしまうといった懸念がつきまといます。
そこで、ばかでかい絨毯を敷くことを意味するロングカーペット・モデルでメディアを設計し、規模が売上に比例するといった方向にすれば、最初はつらいでしょうが、ある時点より高収益モデルに転換できると予測されます。そうしたら、これが本当の「魔法の絨毯」になるかも?
たとえば、NYTimes.comが取り上げていたハイパーローカル・サービスのEvryBlock.comなんかはロングカーペットの典型事例でしょうか。
Outside.inも同様のアグリゲーション・サービスですね。Place.bloggerはどちらかといえば、この手の先駆者である43Places.comを彷彿させますが、ナビゲーションがまだ未完成といった印象です。
画像はEveryBlockのボストン地域版
NYTimes.comが運営するThe Localといったサービスも存在しますが、こちらはニューヨーク州という局所のみですから、局所で勝っていくという戦略としては従来のエリア型フリーペーパーのビジネスモデルを援用するかたちでしょうか。このあたり、地域密着型のローカルメディア企業と前述したハイパーローカルな企業群とのガチンコ勝負が将来予想されます。
わたし自身は、日本でこのロングカーペット・ビジネスをやりたいのですが、さて、こうやって書いて競合者を増やしている時点でやる気があるのかないのか…(苦笑)。
参考サイト
NYTimes.com:Hyperlocal Web Sites Deliver News Without Newspapers.
メディアパブ:市民ブロガー参加型のハイパーローカル版、NYTが開設
30min.という、ロングカーペット・モデル(いいネーミングですね)のメディアを運営しています。
今は地域情報についてのブログを集約したサイトですのでoutside.inに構造は近いのですが、今後はもっと踏み込んだ取り組みを進めていく予定です。
機会があれば、ご挨拶させてください。
投稿情報: tanigox | 2009/09/02 14:55
> tanigoxさん
はじめまして。拝見しました。今後が楽しみですね。連絡先は本ブログ右上あたりにリンクがありますので、いつでもどうぞ。
投稿情報: 小林 | 2009/09/02 15:38