第58回新聞週間『記念の集い』にパネリストとして参加した。
実は以前に同協会発行の会員誌に寄稿したことがあり、それから数年以上経過したいま、またお声がけいただいたというわけだ。かつて、私が寄稿したその会員誌を読んだ知人が「シブい媒体で書いていますね」と感想を漏らしたが、今回も同協会に呼ばれたことを知り合いの新聞記者は「シブい仕事をしていますね。」と述べた。どうやら、同協会はジャーナリズム界ではいぶし銀のようなシブい存在らしい(笑)。
コーディネーターの小谷真生子氏はテレビ東京でおなじみのキャスターである。実は彼女目当てに来場していた弊社社員も目に付いた。パネラーは韓国から趙 章恩氏(ITジャーナリスト)、日経新聞本紙でおなじみの伊藤元重氏 (東京大学大学院経済学科研究科教授)、弘中喜通氏 (読売新聞東京本社取締役メディア戦略局長)という面々。
趙氏による「OhmyNews」のレポートはとても興味深かっ た。ご存知かもしれないが、同サイトは市民記者を起用したまさに草の根ジャーナリズムを体現したオンライン・ニュースサイトで、韓国ではかなりの有力媒体 となっている。同サイトの成功に刺激を受けた新聞社も多いのではないだろうか。昨年、朝日新聞でも同サイトの創業者が来日して講演を行なっていた。私も非 常に関心を寄せている。
パネルでは弘中氏が新聞社側の代弁者というかたちになり、私や趙氏がネット側の代弁者という構図になってしまったが、控え室でお話をした限り、弘中 氏自身は海外のオンライン・ジャーナリズムの動向に造詣も深く、私としては釈迦に説法のようなことばかり述べてしまった気がする。
ただ、いつも思うことであり、実際に会場でもそう述べたが、昔から綿々と議論される本会のような「新聞はどうなるのか会議」(命名 by 私)は、「ジャーナリズムはどうなるのか?」と「新聞社経営って大丈夫?」という二つの問題が混同されている。もちろん、不可分な問題だが、切り 離して語らないと議論が先に進まない。
つまり、「理想的なジャーナリズム」=「合理的な新
聞社経営」とは限らないから。前者を達成することと、現状の規模(社員数と売上高)の維持は相反する可能性だってある。
Slate Magazineのように良質のジャーナリズムが黒字になるとも限らない。MSが手離し、買収したのがワシントンポストというのがとても象徴的である。
……だいたいは、「新聞社(あるいはテレビ局)には大義もある、客観性もある、信頼性もある。それを維持できるのがいまの規模なのだ。しかし、ネット・パワーも取り入れたいけれど、なんだかうまくいったらいったで現行否定しなきゃならないし、そもそもネットって怪しそうだし、大メディアには批判もいっぱいだろうし怖いなあ」という雛形に閉ざされ たまま、欧米や韓国はああだこうだと語り合って終了になりがち。
……ということで、この手の議論は公開の場(つまり、新聞社の同僚や上司がいない所)でないほうが、もっと本音トーク炸裂で問題の洗い出しが可能になるのではないかと思う。
そうはいっても、個人的にはとても有意義なパネル・ディスカッションであり、オーディエンスの方々も熱心にメモを取られていたり、かなり濃密な時間を共有できたように思う。
この日のウケ狙いパワポは、少し滑った気がする(赤面)。
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