以下は共同通信で連載中のコラム『本の街角』向けに今年5月頃寄稿し、いくつかの新聞に掲載された原稿です。新聞の読者向けなので、「デバイス」や「UI」などというジャーゴンを使わずに説明しなくてはなりません。
その意味では担当者からの指摘により、やっと一般の方にも理解すれすれ(……それも怪しいけれど)の原稿となるわけです。そんな苦労の痕跡を残す記事を、ときどき、本ブログにも再録したいと思います。
電子デバイスに欠如しているものはなんだろう。
どんなに読みやすくなろうとも、紙との差は「指の快楽」における操作性や直感操作を可能にする「マニュアル要らず」という点ではないだろうか。
ページをめくる、端を折る……そのような行為が操作のひとつだとしたら、マウス操作は間接的すぎる。
アップル社のiPodTouchは、人間の指を使ってイベントを起こす。その操作性だけのために、買い求めてもよいと思える電子デバイスだ。写真をもっとよく見たい場合には、人差し指と親指で任意の部分を広げる動作をすればいい。
すると、写真は拡大する。縮小はその逆だ。また、写真を次々と閲覧するなら、指で写真を左右に弾けばいい。弾く速度に比例し、写真は次から次へと消えては現れる。今後、新聞と同じくらいに薄くなった電子デバイスが登場したら、操作性は紙のそれに近づけるべきだろう。
一方、携帯はどうだろうか? 「指の快楽」以前の問題だ。まだまだ文字が並ぶだけのそれは、直感操作からはほど遠く、コツの習得が必要だ。当初のウェブがそうであったように。
ネイキッドテクノロジー社は、日本の若者によって創設された技術系ベンチャーだ。
かれらは、現状の携帯サイトの操作性をもっと直感的なものにするべく、ユーザーに提供するソフトを開発中だ。今夏にはお披露目されるだろう。
たとえば、お気に入りのページを文字情報としてではなく、ページそのものが宙に浮かんで回転し、そのどれかを選べるように立体的な表示を行なう。
開発者の野澤 貴・取締役は「ユーザーがわくわくするような動きが表現できる携帯を目指したい」と語る。「ユーザーインターフェイスというのは機器の制 約によって決めるものではない。それぞれの機器にあわせて提案していけたら」(菅野龍彦・代表取締役)と夢を募らせる彼らの視野には国内だけではなく、海 外市場も射程に入る。
携帯の操作性に革新がもたらされる日を期待したい。電子デバイスが本に近づけるのかどうか、各種のアプローチはその端緒についたばかりだ。
株式会社ネイキッドテクノロジー
同社のテクノロジーを使用したプラットフォーム : Colors
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