以下は、今年の8月に共同通信の連載コラム向けに寄稿した記事を改訂したものです。
紙の雑誌が進化したかたちがデジタル雑誌だという意見がある。しかし、筆者はそう思わない。
雑誌の神髄はコミュニティにあるため、その形状にこだわり過ぎると、本質を見落としてしまうと考える。だから、時にウェブのほうが雑誌よりも雑誌らしいという印象を抱くことがある。
一方、ここにきて、米国ではデジタル雑誌も百花繚乱となり、大手出版社の参入も目立ってきた。まだ紙を凌ぐビジネスに育っていないようだが、もしかしたら未来の萌芽が発見できるのではないか、と刮目している。
たとえば、デジタル雑誌発行の大手Zinio。
こちらは既存の著名紙雑誌のデジタル版を販売する、いわばネット上のニュース・スタンドだ。ここでは、「プレイボーイ」「コスモポリタン」「ビジネスウィーク」などのデジタル版が販売されている。
実は筆者もZinioのユーザーである。なぜなら、日本で輸入されている洋書の値段が高すぎることと、直接、現地の版元に定期購読を申し込んでも、発売されてから届くまでの時間差や購読手続きの煩雑さに嫌気がさしているからだ。Zinioは筆者のような顧客を見込んでか、米国のみならず、英語圏以外の洋書も数多く取り扱っている。つまり、紙の雑誌のデメリットをデジタル版で埋めていく方向性なのだ。
出版文化国際交流会の理事をされている金平聖之助氏が刊行している「アメリカ出版情報08年6月号」によれば、ジニオ以外には、Texterity、Nxtbook Media、Olive Softwareがデジタル雑誌の大手4社に挙げられるようだ。それらの合計刊行点数は、今年には2718点に達する見込みらしい。
現在のところ、デジタル雑誌は紙資源を使うことのコスト圧迫を防ぐ意味合いも大きい。積極的にユーザーに使ってもらうためには、どうすればいいのだろうか。
答えは簡単だ。
PCや携帯電話以外に、まるで雑誌や新聞のように身軽に携行できる新しい電子機器があればよい(これについては、機会を改めて後述したい)。そうすれば、デジタル雑誌の時代は一挙に花開くと思うのだが、問題はあとどれだけ待たねばならないかということだろうか……。
関連記事
iPhone向けデジタルマガジン
コメント