Walled Garden Mentalitiy という言葉がある。
日本語でちょうとよい訳が見つからないのだが、つまり、“塀で囲まれた庭”のような心情を指す言葉だ。悪い意味で使われることが多い。
これは、そのまま今の新聞・テレビなどのマスメディアについて当てはまるのではないだろうか。
著者註:私はなにもマスメディアがダメだと言っているのではなく、それらメディアが組織として巨大化したこと自体が、21世紀のジャーナリズム(仮にジャーナリズム2.0として)との適合を難しくしているのではないかという疑念を抱いている。
かつて、マスメディアは自分たちが唯一無二の情報源として、ニュースを配信してきたのだが、ネットの普及により、その独占的な地位を奪われてしまったといえる。
このブログでも言及しているように、ネット経由のニュースワイア(記事配信ネットワーク)が登場したいま、何百人も抱えた組織を維持せずとも、もっと低コストでニュースを配信することも不可能ではないだろう(紙による配信という物理的な流通に依拠しなければ)。
そして、なによりもリンクジャーナリズムの普及により、第一報以外にも、そこにオピニオンや見識をもって解説することができる。
しかし、Walled Garden Mentality がそれを阻むのである。
なぜ、朝日新聞は読売新聞の記事を引用しないのか。逆もまた然り。自分たちがワンソース(唯一の情報源)であるという気概が、ネットにおける情報の伝播やユーザーの意識と食い違ってきているのだ。
ワシントンポストは、最近になってリンクジャーナリズムで構成されるセクションを同紙のサイト上で開始した。
Political Browserという名前の政治面のなかのコーナーだ。当然、自社の競合社へのリンクも含まれるため、これまでのWalled Garden Mentalityを破る試みとなる。
以下は、編集局長のJames Brady氏がAP通信の取材に答えたものだ。
"Our relationship with readers is changing," said Jim Brady, the site's executive editor. "We're not just about providing readers with terrific journalism from The Washington Post but access to great journalism, period."
我々と読者との関係は変わりつつある。
我々は読者にワシントンポスト紙のすばらしいジャーナリズムを届けるのではないがだけではなく【コメント欄参照】、偉大なジャーナリズムにアクセスさせる。以上。
これは小さな一歩かもしれないが、大きな一歩になるかもしれない。
情報源 : Editor&Publisher
本ブログ内の関連記事 : 米地方紙の通信社離れが始まった? , メディアがメディアの未来を語る前に
この記事を読まれた方が参考になると思われるだろう記事(リストラが進行する米新聞の現実が書かれている):Transforming the Architecture(AJR)
Bradyの発言の日本語訳が間違っています。
<我々は読者にワシントンポスト紙のすばらしいジャーナリズムを届けるのではないが>
ではなく
<我々は読者にワシントンポスト紙のすばらしいジャーナリズムを届けるだけでなく>
でしょう。
前者の訳では、自社の記事などどうでもいいように取れて、ニュアンスが大違いです。
投稿情報: hansei | 2008/10/15 14:38
ご指摘をありがとうございます。
本記にも註記しておきます。
投稿情報: 小林 | 2008/10/15 15:43