以下、共同通信で連載しているコラムに寄稿した記事の再録です(9月の掲載分)。
現在、私たちの周辺には多くの書店が存在している。人気商品ならば、日本のどこにいても入手できるだろう。しかし、一方で、人気商品以外については、直接その出版社に問い合わせるか、古書、図書館ほか、オンライン書店などで探すしか術がない。特に専門性が高く、過去に発売されたものなどの入手は難しい。
米国では大手出版流通業者のイングラムが出資したライトニングソースという出版社があるが、ここでは、いっさい在庫をもたず、データで雑誌や書籍を預かり、お客から注文があると、それを希望部数だけ印刷するというシステムをとっている。つまり、プリント・オン・デマンド(POD)と呼ばれる少部数簡易出版システムの大手出版社である。
ただし、ライトニングソース社は自らコンテンツをつくっているわけではない。米国と英国に拠点をもち、他の出版社から委託され、その本をデータで保管し、販売するという、いわば在庫をもたないオンライン印刷所兼書店ともいえる。データで商品を預かっているため、品切れがないし、どんなに刊行年が古くて少部数しか見込めない本でも、入手が可能というわけだ。
同社のウェブサイトによれば、1998年には1100のタイトルしかそろっておらず、年間11万冊しか印刷されていなかったが、昨年には50万のタイトルをもち、年間5000万冊を印刷するに至っている。
初期には大学の出版局など、専門性が高く少部数しか売れない本が多かったようだが、インターネットの普及とともに、大きく伸長し、現在もとどまることを知らない。
ある業界紙によれば、同社は6500社の出版社より委託を受け、1冊あたりの平均印刷部数は1.8部とのこと。日本でもPODの試みはあったが、普及しているとは言いがたい。だが、これからますます本が貴重資源になるほど、このPODは輝きを増すに違いない。
link : ライトニングソース
(加筆)
参考まで:なお、日本では、たくさんのPODサービスが登場したが、新興のオンブックは、オリジナルのコンテンツをPODで出版するなど、出版社としての役割を前面に打ち出している。ライトニングソースとは反対のアプローチであり、興味深い。
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