さて、なにやら長いタイトルですみません。
昨年のメディア界において、もっともインパクトが大きかった出来事だとわたしが思うのは、Spot.usの登場です。
Spot.usは、サンフランシスコの市議選における政治家たちの公共広告をファクト・チェック(事実確認)する記事への募金で話題になりました。
同サイトではサンフランシスコを中心とした「報道」に対して、市民が寄付できるような仕組みが取られています。はじめに、フリーランスの記者が特定の話題を選び、その取材に対して寄付を呼びかけます。
記事はだれでもアップすることができ、もし、その記事がマスコミに「独占掲載」された場合には寄付金が戻るような仕組みをとっているとのこと。
これは市民ジャーナリズムの新しい試みですが、このように調査報道を支援する仕組みは、古くはイラク戦争時にフリー・ジャーナリストのChristopher Allbritton氏が自身のブログでイラクへの旅費援助を読者に呼びかけたケースが先例として有名でしょう。
メディアの最前線をレポートするサイト・MediaShiftのMark Glaser氏はSpot.usのような調査報道への資金援助を、クラウドファンディングと呼称していますが、貧困国での起業家支援など、ネットを通じて直接投資を呼びかけるマイクロファンドと同様のものと考えられます。
MediaShiftによれば、Leonald Witt氏が主宰するRepresentative Journalismが、ミネソタ州のコミュニティについて年間を通じて記事を書く記者を、クラウドファンディングで雇用しようとしているそうです。
つまり、これからはパッケージングするメディアに対価を払うのではなく、読者が個別にジャーナリストを雇って取材を依頼し、その成果を社会に還元していくという考え方もあるのではないか、ということです。
この手法は、オープンソース・ジャーナリズム(記事を無料で開示し、引用や使用を許諾していくジャーナリズムの在り方)の潮流に沿っていて、Spot.usも寄付を得て取材した記事は、基本的に無料で閲覧できるようにしています。
ユニークなのは、それらオープンソースの記事の隣に、この記事を作成するにあたり支援した寄付者たちのリストが並ぶことです。つまり、記者の手柄だけではなく、取材を可能にせしめたスポンサーたちもクレジットされることで、市民ジャーナリズムが体現されています。
かつて、「社会の木鐸」という言葉がありました。まさに、オープンソース・ジャーナリズムとクラウドファンディングこそ、字義通り「社会の木鐸2.0」を喚起するのではないでしょうか。
→ オープンソース・ジャーナリズム関連の記事
参考サイト:
The Editors Weblog "US : MediaShift offers alternative business models for newspapers"
MediaShift "Top10 MediaShifting Strories of 2008"
コメント