……そんなときには自分で自分を癒すしかない。愛用のカメラを手にしてみる。ずっしりと重く、表面はひんやりとしている。ファインダーを覗く。少しは気分がいい。レリーズしてみようか。
アア、カメラガナイト シンデシマウ…
11月30日。11月29日から逃れるために東京を離れた。サミシイ。冷たい夕刻、最近自殺者が出たという山の駐車場で長時間露光。帰り際、だれかが車のドアをノックした。ドアを空けてもだれもいない。幽霊は突然訪れ、すぐに去った。怖くはなかったが、ただ寂しかった。
失ったものはなにか、得たものはなにか。それを判断する立場におまえはいない。カメラだけが判断する。おまえは指を添えていればいい。
東京に戻ってきた。だれかと話をしなきゃ。まずは、オドメーターに話しかける。
やあ、ぼくだよ。ずっと独りで山のなかを彷徨っていたんだ。せせらぐ水のように明瞭に思えたことがひとつだけある。ぼくは饒舌すぎた。これからは静寂について語ろう。
Fxxk the post modern head, Fxxk the conceptual something, May the force be with U.
くたばれ、ポストモダン野郎、くたばれ、コンセプチュアルうんてけ、フォースがおまえとありますように。
"純粋に人間的なもの以外に滑稽はない/シャッポの形態を作った人間のユーモアを笑うんだ"(『天国の夏』西脇順三郎)
君がいなくて寂しいよ、スノーホワイト。でも、君はぼくが一人くらい欠けても寂しくないさ、きっと。若い君にとって出会いとは必然ではなく、まだ美貌と若さでどうにかなる偶然の範疇だろうから。
今晩も君をほかのだれかが暖めている。でも、君のほしかった心の平穏はこっちにあって、あっち側には体温しかない。やがて、君は時間が可逆的に遡らないことを知る。君は永遠になにかを失い、それに気づかないフリをするだろう。進んで魔法にかかる姿が目に浮かぶようだ。人生には、毒リンゴがいたるところに実っている。
そう、世界はたちの悪いユーモアとぼくを除いた善良な小人たちのハグからできている。精霊的な見地から言えば、化石になって口をつぐんだほうがまだマシさ。これ以上、喋ると君を呪いたくなるからね、スノーホワイト。ただ、これだけは言っておくよ。愛している。一風変わった方法で。注意して、毒リンゴ!
Taken by SIGMA DP-2
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