時折、自分は幸運な旅行者だと思うことがある。体は偶然によって砂みたいに運ばれていく。偶然は風であり、その偶然を呼び込むには心のマストを高く上げればいい。そして、流転は留まるためにあり、留まることも形を変えた旅のひとつなんだろう……
だれかに生かされていると感じることはあるだろうか? 20年ぶりに出会った友人は毎日、彼の母親と共にわたしとわたしの家族が健康で幸せであることを祈っていてくれたそうだ。
頭のなかで小さな何かがコトリと音を立てる。
わたしとあなたはだれかを生かす人になろう。
フォレスト・ガンプという映画のなかで、わたしがいちばん好きなシーンはベトナム戦争にガンプが従軍していた時、彼と一緒に闘った大佐がガンプと一緒にエビ獲りを始め、そこで得たお金をもとにアップルコンピュータ(現在のアップル)の株を買い、それをガンプにプレゼントするシーンだ。ただし、ガンプは果樹園の株をもらったと思うんだけどね。
あのシーンで大佐は自分の妻をガンプに紹介し、ニコニコしながらアップルのマークが入った書類を渡す。そのとき、わたしは幸福な気分になる。皆もそうじゃないかな? その後、アップルコンピュータが株式公開したことを知っているわたしたちは、ガンプがお金持ちになることを知っているから…というだけの理由じゃない。
ガンプと大佐は字義通りの戦友で、そして事業パートナーだ。戦後、米本土に帰国したら反戦家たちから唾を吐きかけられる。大佐は米国のために足を失ってしまったのにもかかわらず。なにより、泣けるのはガンプは足を失い自暴自棄になっていた大佐に人生をプレゼントし、そのお返しに大佐はガンプに未来をプレゼントしたということだ。
この二つのプレゼントは、人にあげるのがとても難しい。しかも、あげるタイミングというものがある。人生に何度もプレゼントできるものではない。
あなたはだれかに、そのどちらかをプレゼントをする。あるいは、それを知らないうちに受け取るかもしれない。その贈り物はすでにあなたのもとやだれかのもとに届くことになっている。わたしたちはただの配達人だ。それを届けるために旅を続けているのかもしれない。
今晩も夜は暑く、椰子に月光が落ちている。川辺にさざ波が立ち、嘴が黄色い鳥が月に顔を向け、その瞳を光らせる。深い眠りに落ちているわたしたちは夢のなかで贈り物の箱をそっと開く。
powershot G10/ 5Dmark2 with smicron R 50mm f2.0 チェンナイ市内のホテルにてupload
あなたらしいとっても良いコメントが読めました。
読んでいるほうが、心地よく素敵なブログです。
体調管理と脳の休み時間を確保して、ながーく続けてくださいな。
投稿情報: ゆとりん | 2010/06/14 12:10
> ゆとりん さん
ありがとうございます。
ところで、どこかでお会いしていますか? なんだかそんな気がしたもので…。
投稿情報: 小林 | 2010/06/14 14:21
書きかけの小説、またどっかで再開してほしいな。
こばへんは世界は矛盾に満ち残酷であることを知ってるのに誰かの幸せをいつも祈ってるからね。
読むといい気分になれる。
投稿情報: nomad | 2010/06/26 01:01
> nomad
ありがとう。書きかけのアレは、いずれ機会をみて完結させるつもり。
その前に書いた中編等、いま版元を探しているところだけど、今度読んでね。
投稿情報: 小林 | 2010/06/27 12:11