チェンナイ(旧称マドラス)市内にあるホテルを一歩出ると、周辺はバラックだらけ。また、路上で寝ている人たちもたくさんいる。ここではリクシャーの客引きを断るのが、歩くということだ。
ただ歩いているだけで人々からの視線がスターウォーズで飛び交うレーザー光線のように刺さる。視線で人が倒せるとしたら、自分はもはや死に体。コンデジのパワーショットG10を隠すように携行しているが、見透かされて掌が焼けるように熱い……
あちらこちらに神がいる。すごい偏在ぶりなのだが、まだ圧倒的に足りていない気もする。神への飢餓? …違う、日本ではもしかしたら違うアイコンに形を変えて偏在しているのかも。それがなにか…いまは考えられない。
雨が降るなか、友人が運転するフォードでゴールデンビーチへと向かう。このビーチは名前こそ素晴らしいが、ベンガル湾にはサメがいるので誰も泳いでいない。コリウッド映画(こちらでつくられる映画)の撮影場所としてよく使われるそうだ。その田舎道には20年前に訪れたままの風景が広がっていた。相変わらず、物乞いや客引きも多い。
透明に。限りなく透明に…。眼差しは透き通らなくてはならない。口はいろいろと語り、濁っていく。川が澄んでいれば泳いでいる魚が見えるはず。川を覗くようにわたしはお前を覗く。しかし、同時にわたしがその川面に反射する。もし、覗いた川が澄みきっていたとしたら、覗かれたのはわたしか。
8世紀につくられた海岸寺院から市内に戻る。バスが転倒し、路傍で喧嘩が起きていた。ホテルに戻ると、体のなかに喧噪が引っ越してきたみたい。骨休みのはずの渡印だったが、骨抜きにされた気がする。
ここに来る前に滞在していたシンガポールがリゾートライフだとしたら、こちらはリアルライフ。埃だらけの窓越しから、一瞬だけ夕日がみえた。
powershot G10 チェンナイ市内のホテルにてupload
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