すでに話題となっているが、ソニーによるiPod追撃機種ウォークマンAのキャンペーン・ブログ(ウォークマン体験日記)の記事に400件以上のコメント(突っ込み)が入り、急遽終了した件について、動揺している企業も少なくない。
この件をもって、企業側がネット上の販促キャンペーンにさらなる抵抗感を抱くかもしれないが、やり方に問題点があったということを追認しなければ、BR(ブログ・リレーションnamed by 増田"maskin"氏)の未来は暗い。
まず、今回のケースはそもそも炎上への火種が製品そのものに内包されていたのではないだろうか。
そこに至ってブログがメーカー側の自作自演(真贋は不明だが、疑われる余地を多く残している)と看做され反感を買ってしまった。
いくつかのブログを読むと、概ね「そもそもやらせに走ることがおかしい」「やらせならば、最初から完璧にやれ」という声が散見される。後者についていえば、「やらせなのに、なんでブログを使う理由(コメントやTBを開放する必然)があるのか?」というふうにも受け取れなくもない。
成功している企業ブログとそうでないものの命運を分けるのは、まずユーザーを信頼するかどうかがポイントになるだろう。
ユーザーを味方として、そのコミュニティに対して益をもたらす施策、またブログというツールを使う必然性がほしい。単にPingを飛ばしたり、RSSで拾われるからといった告知ツール(拡声器)として捉えるのか、それともSEOは副次的な要素で、そもそもコミュニティ組成のツールとしてブログを捉えるかで、その後の展開は違ってくる。
さらに、ほかのメディアで済むような企画をそのままネットに持ち込むことについては、企業側は考えを改める必要があるだろう。
企業側がネットへの訴求が難しいと感じる点は、慣習的なクリエイティブを敷衍しがちだからだ。それがブロガーやネット内の物の感じ方・見え方にフィットするかは軽視されることがままある。
クリエイティブに経験豊かなブロガーが関与すれば、またそれもかなり違った結果になってくると思う。
しかし、特に大手企業の場合、企業→代理店→クリエイティブの三層構造となりがちであり、そのなかでも、代理店のコントロールが重要なカギを握っている。
代理店が企業側にそのメリット・デメリットをきちんと説明しないまま、キャンペーンのなかに「ブログもいれておきました」的に組み込み、なおかつ企業側が通常のクリエイティブに接するのと変わらぬ意識であった場合、その齟齬は思った以上に大きくなる。
このような乖離を防ぐ意味でも、企業側担当者、代理店担当者もブログをもっと理解したスタッフをインサイダーとしてチームに編成すべきであり、戦略立案の前にフェース・トゥ・フェースで討議する余裕がほしい(たいていは浅い日数で、企業側の要求だけが代理店経由でクリエイティブに突きつけられることが多々あるので)。
懐疑的な企業人から「日記ばかりの日本のブログには影響力がない」という声を聞くことが稀にあるが、今回の件ははからずしも影響力をアピールしたかたちとなった。
いつもお世話になります。村松@ブログビジネスファンドです。とても面白いエントリーなので、TBさせていただきました。
投稿情報: muramatsu | 2005/11/26 18:15
ブログの影響力がこんなネガティブな形ではなく、win-winの形で出てくる事例を渇望しています。仰るとおり、企業側の丸投げ多重構造では、いわゆるradical trustが発揮できず、このような結果にしかならないということなのでしょうね。
弊ブログに引用させていただきましたので、TBをもってご報告とさせていただきます。
投稿情報: アリタケン | 2005/11/26 22:43
村松さん、どうも。むかし、 AIDMA、いまはAISCEASなんですね。覚えにくいなあ(苦笑)。
アリタさん、はじめまして。
ジョブズについての記述、興味深かったです。闘うべきはジョブズのパラノイアという点、言い得て妙ですね。今後も覗かせていただきます。
投稿情報: kobahen | 2005/11/27 11:26
始めまして。
ブログのコンテンツや方向性を検討中の者(ウェブマスタ)です。
ユーザーさんに楽しんでいただけるコンテンツって何だろう???と模索しているとき、タイムリーでとても参考になる見解を示していただいたことに感謝します。またこのエントリーに出会えたことが嬉しくて書き込みさせていただきました。
・・・こういう気持ちがブログの原動力なんでしょうか。ふと、そんな気がしました。
投稿情報: ぞーぢるし | 2005/11/28 19:01
はじめまして、ぞーぢるしさん。
その気持ちをありがたく受け止めさせていただきます。
たぶん、皆が五里霧中のなか手探りだと思いますが、拙文がなにかのきっかけになれば、それもまた私にとっての「ブログの原動力」となるでしょう。
投稿情報: kobahen | 2005/11/28 21:56