アメリカでは講演中にオーディエンスが持ち込んだラップトップをWi-Fiに繋いでIRCやAIMでチャットをしながら、講演者のスピーチについて語り合うことを「Backchannel(バックチャンネル)」というのだとか。
喋ったことの事実確認などに使われる場合もあれば、そうでない場合もある(よね?)。
われらが(私は2年越しのMTユーザーで、しかもこのブログはTypePadなもので)Six Apartの創業者メナ・トロット女史がフランスで開催されたLES BLOGS 2(単数の定冠詞は男か女なのか気になるところ)の講演でこのバックチャンネルを会場のスクリーンに映し出すという英断(?)を行ったと聞く。
そのバックチャンネルで「bullshit」と書かれ、すぐにメナが舌鋒鋭く「asshole」に加えてF語(!)で応戦。結局、会場内で立たされるハメになった「バックチャンネラー(私の造語)」と怒ったメナがディベートしたようだ。
結局、メナは自分のブログで当日のできごとについて記載。
さらに、「bullshit」とバックチャンネルで書いたことが原因で衆目の前に立たされたドットベン(H/N)ことメトカフェ氏が自身のブログで「本当は(ブログで)書くつもりじゃなかったけれど……」と思いの丈を綴った。
メナが語った「ブログにおける丁寧さ」をめぐるディベートが、結局は雑言対決だけ強調されてしまう結果となったようだ。かくいう私もその場にいたわけでもなければ仔細を省いて伝えているのだから、それに加担しているだろう。しかし、私が伝えたいことはメナの語る「丁寧さ」とメトカフェ氏の意見についてではないのであしからず。
私が注目したことは二点。
メトカフェ氏の当該日記についたDave Winerのコメントは最高である。
これこそが論争のハイライトかもしれない。
メトカフェ氏は「ブログ圏においてのコメントの付け方や参照は、文化の問題だ。メナが言っていることはヨーロッパで開くカンファレンスでは、とても"米西海岸的アプローチ"である(つまり、能天気)」と述べている。そして、「ブロガーの丁寧さ」について、それが不適切であるという論を展開し、いかにメナの激しい言葉遣いにショックを受けたかを述べ、また企業人としてそのような言葉や態度は個人的すぎると批判(大意)。
Dave Winerはそれに対して、こんなコメントを残している。
「親切であることが不適切だと思うのなら、なんでassholeなんて言われて怒らないのさ。あんたは、タフで実直な物言いの、ヨタ話お断りなマルボロを吸う欧州人なのか、それとも、そこらによくいる、ぐにゃぐにゃ拳の傷つきやすいカリフォルニア男かい?」
そして、もう一点。
「bullshit」と言ったら、「asshole」と返される。これ、定説。
もともとは丁寧さをめぐる論議なのに、この二人のバトルが反面教師的にオンライン上の態度についての示唆をもたらしたような……。
私は日本でメナにお会いしたことがあるが、とにかく強い女性だな、という印象を抱いた。MTの優しいインターフェイスの生みの親なので、もっと線の細い方だと勝手に想像していたので、よけいにその印象が強かったのかも。そして、それはこのカンファレンスでも追認したことになる(もちろん、彼女の強さを私は讃えている)。
ブログであれ、人生であれ、レイモンド・チャンドラーの小説で書かれた有名な言葉が胸に沁みる。
強くないと生きていけない。優しくないと生きる資格はない。
参考(個人的に刺さったので)
エスター・ダイソンがバックチャンネルを発見した日
via : workbench
非常におもしろかったです!
他じゃなかなか読めないっすね、これは。
もっとガンガンとブックマークされるべし、な記事でした。
投稿情報: 佐々木 | 2005/12/13 22:33
あまり知られていないみたいですね。
結局、アメリカには2ちゃんねるがないけれど、バックチャンネルがあるのでスピーカーたちは戦々恐々だとか。
投稿情報: kobahen | 2005/12/16 01:38