なぜなら、その本(宝島社新書)を買うのに、すでに数百円も投資したからだ。
……という愚にもつかない冗談はともかく、本書『70円で飛行機に乗る方法』には、その方法が書かれていない。
そのかわり、欧州、アジアで登場してきているLCC(ローコストキャリア)という激安航空会社についてと、なぜ日本でそれらが乗り入れることができないか等々、現代の国際航空事情について簡潔にまとめられている。
個人的に興味を惹かれたのは、日本人にとって東洋の玄関口だと思っていた成田が、すでにハブ機能を果たしていないという指摘だ。たしかに、ユー ザーからしてみれば、近隣アジアの国際空港から比較して、都心部から遠くて雰囲気が暗い成田には行くだけで気がめいる。加えて、すでに世界の新興航空界会社を受け入れる には容量オーバーが指摘され、その空港使用料の高さもネックだろう。
そのため、日本から安価に海外に渡航するならば、お隣韓国の仁川(インチョン)国際空港まで出て、そこから乗り継ぐのがいいだろう。ゆえに、仁川国際空港はアジアの新しいハブとなりつつあるのだ。
ということで、日本だけガラパゴスのようになっているのではないか疑惑だが、その良し悪しは措くとして、携帯の規格にせよ、あらゆる分野において国際的な競争力は低下しているのではないか。
…と思わざるをえないのは、最近、「業界を救うためにうんぬん」という名目で採られてきた保護政策が、実は当該業界全体の進化を止めているのではないか、と思うことしばし。出版業界にしても、守るべき産業がはたして、競争力のある魅力的なものになっているのか。
銀行の自己資本率引き上げのときもそうだったが、にっちもさっちもいかなくなって、突然、ショック療法が採られるケースが多いようだが、そこからはショックのほうが大きすぎる。
「良薬口に苦し」ということわざがあるけれど、投入のタイミングを誤ると、「劇薬骨身を粉砕し」になるのだ。
残念ながら、永遠にだれも自分たちを守ってはくれないし、成長だっていつか鈍化する。であれば、常にオープンテキスト(書き込み可能)な余地をとり、他所からの刺激と交わり、自己進化を果たすしかないが、日本人には苦手な分野だと言わざるを得ない。
インターネットが商用接続を開始した際にも、「あれはアメリカの文化だから、日本には根付かない」と某有名経済新聞の記者たちから何人にも言われたことを覚えている。一部からは国賊呼ばわりもされた(笑)。新しいものを畏怖し、忌みするのは仕方ないことだと思う。しかし、保護政策というのはそれらとは別次元の問題だ。制度として、それを採釈しない、という立場を組織的に取っていくわけだから。それがはたして未来に繋がるのか。それとも、ただのエゴなのか。
もしかしたら、ゆるやかな鎖国はいまも続いているのかもしれない。『パラダイス鎖国』は、現代の不可視な鎖国状態について問題を提起する。数々のITベンチャーを擁しながら、世界市場で通用しないのはなぜか。
最近に完結したマンガ『オメガトライブ・キングダム』は、進化について考えさせられる内容だった。この場合、進化は闘争を経て獲得するものだが、意外な結末が待っている。
古代文明が隆盛したのち、衰退するのはなぜか。また、次の進化に備えてなにをすべきか、いまそんな観点から経営や市場について書かれた本を読んでみたい。
……にしても、70円で飛行機に乗るはずが、成田を乗り継ぎ、ぜんぜん違う話へと飛んでしまった。
コメント