わたしの昨年度の衝動買いベストワンは、このカメラに違いありません。
それはローライA110。
いまでは稀少な110(ワンテン)サイズのフィルムを使用する超小型カメラです。
厚みはそれなりですが、携帯と同じくらいの長さゆえ、トイカメに見えます。しかし、往年のローライですから、トイはつくりません。超精密かつ、高性能。レンズは定評あるテッサーです。カールツァイスからライセンスを受けたローライ製の23mm f2.3という明るいものが付きます。
設計したのは、天才の誉れが高いハインツ・バースケ氏らしいのですが、それにしても、惚れぼれするデザインと質感ですよ。ドイツ製なのに、ポップな色使いも気に入っています。
超精密と書いたのは理由があって、なんと、A110は自動露出のプログラムモード。距離だけ合わせれば、あとは絞りとシャッタースピードはカメラ任せです。このあたり、勘露出派にはちょっと退屈ですが、A110は普及モデルとしての野心作なので仕方ないでしょう。しかも、発売は1974年だというから、びっくりです。
写真は撮影可能状態にしたところ。端っこを引っ張るとスライドしてレンズとファインダーが見えます。スライドと同時にフィルムが送られる仕組み。うーん、ポップな外観に反して機械式カメラの精緻さが、ずっしりとした質感とともに伝わる不思議なカメラです。
周囲に見せると、皆、新製品のデジカメかトイカメだと思うようです。A110が時代を先取りしていたことの証左でしょうね。ローライ信者のわたしとしては、最近のデジタル・トイカメ路線を除いて、もっとも手が出しやすいローライの「本気(?)」製品ゆえ、すぐに買ってしまいました。超お買い得値段です。
ところが、110サイズのフィルムは販売店や現像できるお店が限られているのがネックでしょうか。また、仮に現像できるお店を見つけても、プリントがいただけない。どうにもイメージ通りのものが上がってきません。これは110フィルムに限りませんが、街角DPE屋さんにそれを期待するほうが酷というものでしょう。そのため、わたしは直接ネガスキャンし、ソフトで補正することにしています。
スキャナーには35mmやブローニサイズのフィルムを読み込む台座がありますが、さすがに110フィルムに対応したものはありません。そこで、厚みのある黒い画用紙を買ってきて、自作しました。要はフィルムの平面性をある程度確保して、透過できればいいわけですから、設計は簡単。
そうやって簡易読み取り台紙を制作し、DPE屋さんに依頼してあがってきたフィルムをスキャンしているので、手間はかかりますが喜びはひとしお。
わたしは、蒐集のためというよりも「撮る」ためにカメラを買うので、毎日このA110を持ち歩いています。一眼カメラが脇差しだとしたら、このA110は短刀。間合いが脇差しよりも短く、機動性あふれる点がスナップ・シューターとして気に入っています。
作例はこちら。
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