前回の荏原神社に続き、今回は品川寺(ほんせんじ)を紹介します。携行したのは、愛機ハッセルブラッド 500C/Mと黒銅鏡のディスタゴン C50mm F4.0 T*の重量級コンビ。
旧東海道に面した品川寺の開創は806年〜810年とのこと。商店街を歩いて行くと、山門の前には宝永三年に江戸中に6体つくられた江戸六地蔵の第一地蔵が鎮座しています。六地蔵のなかで笠をかぶっていないのは、この品川寺の地蔵尊だけとのこと。雨に打たれ陽に焼かれた頭部からは、衆生救済のために坐した歳月の重みが見て取れます。
山門をくぐると一転、静かな気が充ちていく感じがします。
東海道七福神詣に含まれる毘沙門天は有名ですが、ほかにも薬師如来像や水月観音像、弘法大師座像などが祀られています。また、厳かな雰囲気の弁天堂のなかに弁才天像の姿があり、暗がりのなかこちらを見透かすかのように燭台の奥に立っていて、気圧されてしまいます。
戦国時代には、武田信玄の命により品川一帯が焼き払われ品川寺も焼失したそうです。そのとき寺にあった水月観音像が甲州に持ち出されましたが、持ち出した二人の武士は発狂したのだとか。その話を聞いた信玄により観音像は寺に再び戻され、草堂に安置されたようです。
そこからさらに歳月が流れた284年後、明治維新の混乱で品川寺は荒(すさ)んでしまいました。また、大正時代には万博博覧会のため出展された寺の宝物である大梵鐘が行方不明となりました。69年後にジュネーブの美術館でその大梵鐘は発見され、無事に寺へと贈還されました。このことがきっかけで品川とジュネーブは友好都市となりました。
そのように、品川寺は歴史に翻弄されながら何度も蘇ってきたわけですね。その歴史を思うと、わたしたちの人生のちょっとした浮沈みなど、瑣末なことに思えてきます。
わたしが境内で好きなものは、ひっそりと佇む小さなお地蔵さんたちです。寺の背後に京浜急行の高架が見えますが、境内はまるで別世界。隠れたパワースポットのひとつではないでしょうか。何度も足を運んでみたくなる古寺です。
(参考資料:品川寺 公式ホームページ / Wikipedia 品川寺 / Wikipedia 江戸六地蔵)
Hasselblad 500C/M, Distagon C50mm f4.0, Kodak 400TX
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