12月4日に電通ホールで『日本のコ・クリエーション・アワード2013』開催を記念したイベントに登壇しました。この催しは本年で第二回めとなり、株式会社電通と弊社が運営するメディア『コタス』が主催しています。
当日は米国NPO法人コペルニクの代表・中村俊裕さんが講演を行い、また、同アワード審査員らによるパネル・ディスカッションが行われました。
いろいろな観点から、各審査員が考える共創について話は盛り上がりました。当日わたしがお話したのは、コ・クリエーション(以下、共創と記します)については、いくつかのジャンルに分かれるということ。
それは、1)企業による社内外の共創促進(オープン・イノベーション)、2)参加型民主制(デモクラシー)、3)社会のデザイン(ソーシャル・デザイン)、4)個人の支援(パーソナル・アドボカシー)です。今回アワードにノミネートされた事案を大別すると、だいたいそのどれかに当てはまるのではないでしょうか。
ですので、共創の主体も、NPO、民間企業、自治体、個人と幅広く、あらゆる分野で勃興しつつあります。大規模アンケートと違うのは、アイデアの収集に留まらず、選択決定権が参加者にも委ねられている(全権ではない)、取捨選択および改案、補強の過程が公開されている等が挙げられます。
共創をデザインするということ
そして、当日にあまり話せませんでしたが、いちばんの課題は共創をどう推進するのかということです。機能させるためには、情熱とある程度の権限をもったファシリエーター(議事等を進行し、議論を促進させる役割)の存在と行程の仕組み化が欠かせません。
共創を押し付けても、それはうまく回らないでしょう。どう機能するのか、そのためのツール(オープンイノベーション・マネジメント・ツール)やゲーム化させるといったやり方はたくさん存在します。あるいは、アイデアを可視化する際にも、段階別にアイデアを選別、洗練させていく方法論もあります。
それらを含めて、共創を実現させるためには、共創の仕組み全体をデザインすることが大切になります。組織であれば、それを誰がどう運営するのか、組織表とは違う人員構成が必要ですし、最終的な権限を誰がどのようにもつのにかまで波及します。
また多くの人を巻き込む場合には、動員する仕組みづくりもさることながら、全員が共感できるテーマ設定、そして効率的に運用するためのシステムも必要となってきます。
シェアと新しいコミュニティ
おそらく、共創を考えるということは、新たな時代のコミュニティについて考えることであり、何をオープンにし、何をシェアするのかについて、個々が選択せねばなりません。それを決定するのはコミュニティの一員それぞれであり、誰かが強制するものでもありません。
このような新しいパブリック(公共)の在り方については、かつてわたしが監修した書籍『パブリック』や『シェア』がヒントになるのではないでしょうか(右カラム参照)。特に『シェア』は刊行からだいぶ経ちますが、刊行当時には理解され難かった考え方や具体的なサービスも、いまでは認知が広がってきた感があります。
当時のシェアリング・サービスに対する疑義には、性善説に拠る脆弱製や自己犠牲が伴うのでは?といったものも呈されていました。前者はそれを乗り越えるための仕組みが用意されていますし、後者はシェアという言葉に対する誤解です。そもそもシェアリング・サービスは、メリットがなければ誰も参加しないため、利他と利己が同時成立するような循環的な環境が整っていることが前提としてあります。つまり、ここでもデザイン力が必要なのです。
IT業界では、ウェブやアプリのユーザーを増やすためにグロース・ハックという概念があり、その専従者も登場していますが、同様に、このコミュニティ・デザインに関する専従者の必然性はより高まるに違いありません。
最後にお知らせですが、建築家の猪熊純さん、成瀬友梨さん、門脇耕三さんほかのシェア研究会の皆さんが2012年に開催したシンポジウムの内容が書籍化されました。わたしも末席を汚しておりますが、興味のある方はお読みください。書名は『シェアをデザインする』(学芸出版社)です。
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