ケビン・ケリーが語る、我々の未来のかたちを変える12の不可避なテクノロジーの力(のうち3つ)
SXSW2016 3月14日17時に開催されたセッションのレポートです。講演者は、米WIRED創刊時の設立メンバーであり、編集局長だったケビン・ケリー氏です(以下、敬称略)。日本の30代ベンチャー起業家には書籍『ニューエコノミー 勝者の条件』の著者と紹介したほうがピンと来る人が多いかもしれませんね。
彼のセッションは、主に彼の新刊『ジ・イネビタブル(必然):我々の未来のかたちを変える12の不可避なテクノロジーの力』のうちから、3つのテクノロジーについて語ったものですが、かなり刺激的な内容だったので、ざっくりとまとめてみたいと思います。(ホントにざっくりですよ)*わかりづらそうな一部は、筆者の言葉で【】で囲んで補記します。太字はわたしのお気に入りのフレーズです。それから、メモを取るのに忙しくて、撮影するのを忘れていました!
1)A.I. /人工知能
ニューラルネット(神経回路網)のように張り巡らされたインターネット(脳と同じ超並列分散処理)+GPU+ビッグデータ、これらの組合せで、人工的な賢さが作られる。いくつもの心をもち、いくつもの思考をするだろう。
IQ(知能)はサービスである。知能は電気のように流動性が高くなり、コモデティ化するだろう。
次代のスタートアップ企業は、ある技術を用いるとき、A.I.を加えるだろう。【IBMのワトソンのように、そのA.I.の能力をクラウドのサービスとして、API化されサービス提供されるようなイメージでしょうか】
A.I.は医者やパイロットのような仕事に取って代わるだろう。皆が使うほどA.I.は賢くなり、賢くなるほど皆が使い、さらにまた賢くなるといったことが予想される【ネットワーク効果っぽいですね】
ロボットはわれわれの仕事をたくさん奪うだろう。しかし、われわれが恥じてきたような仕事を奪う。ロボットは新しい仕事を人間に与えるだろう。人間の仕事は、生産性が問われないものになる。【奪取されると想定される仕事の内容までは、わからないので、突っ込みは入れません】
2)VR ヴァーチャル・リアリティ
VRには二種類ある。ひとつは、没入型〜あなたに新しい現実を挿入する〜、もうひとつは、プレゼンスMR〜あなたの今の現実に新しいレイヤーをそえる〜。【MRはミクスト・リアリティ〜複合現実。グーグルグラスのようなデバイス等を用いて、現実に仮想空間を重ねること】
VRはスマートフォン以降の次のプラットフォームである。
VR(デバイス等)はちっとも良くなっていない。しかし、とても安くなった【ここで、ジャーロン・ラニアの映像。初期VRの伝道師でミュージシャであるラニアが高価なヘッドセッとグローブを装着した写真と、オキュラスリフトを装着したユーザーの写真を見せる。外観にほぼ変化なし。笑いが起きる】
現在のVRは、かつての「回転(スィーベル)」から、「歩き回れる(ローム)」まで進化した。
VRについての結論は、それは現実であり、ここにあるということだ。これは「経験のインターネット化(インターネット・オブ・エクスペリエンス)」である。
ファースト・パーソン(FP)ではない、ユー・パーソンである。【ゲームで表現されるところの第一人称ではなく、あなた自身が主役である】
われわれは、VRによって「情報のインターネット」から「経験のインターネット」に移行する。
VRによって、ユーザーは「ベター・ミー(より良い自分)」を目指すだろう。
VRはソーシャルメディアのなかで、もっともソーシャルである。【つまり、自身が直接体験するわけなので、仮想空間上の社交も実体験そのものになるでしょうね】
3)トラッキング:追跡
「あらゆるものはすべて計測可能に」が計測可能になる。
究極の個人化(ヴァニティ)がもたらすものは、絶対的な透明化(トランスペアレンシー)である。
【図示しつつ】プライベートが極まると一般的になり、透明性が極まると個人化が進む、という相関関係にある。
トラッキングは、相互監視であるべき。誰が追跡しているのか知ることができるなら、その情報の間違いを正すことができる。
以上です。途中、時差ぼけでうつらうつらしつつ、すべて拾えたわけではありません。ご容赦ください。講演のエッセンスをお届けできたら幸いです。
【小林の余談】
ケビン・ケリーは、ワイアード創刊時の編集局長だったので、日本版立ち上げ前の事前交渉時から交流がありました。彼と初めて会ったのは、ワイアードの創業地であるセカンド・ストリートの古いビルにある会議室の一角です。
ケリーは流暢な日本語で「コンニチハ!」と語りかけてきたので、ついこちらも日本語で話しかけたことを覚えています。今回、かれのサイン会がはじまる前の楽屋裏に押しかけたのですが、嫌な顔せずにつき合ってくれて深謝です。実に二十数年ぶりの再会でした。
そのときに聞いたのは、彼の新刊を朝日新聞の服部桂氏が翻訳中とのこと。服部さんといえば、故マービン・ミンスキー(人工知能の父)の訳出など手がけ、インターネット黎明期以前から活躍する日本屈指の科学記者です。わたしは彼を日本のジョン・マーコフ(ニューヨークタイムきっての科学記者)と思っています。期待大ですね。余談でした。
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