前回から続けて、TOA2017の見どころのひとつである、ユニークな登壇者の顔ぶれを紹介します。
ダイソンに認められた自然エネルギーのスタートアップ、 誰もが使える暗号化メール、AIによる画像認識機能のAPI
Moya Powerの創設者でCEOのCharlotte Slingsby氏は英ジェームズ・ダイソンが創設したダイソン・アワードの受賞者です。薄いプラスティック製のシートが風力発電を行い、蓄電していきます。即効性の高さやデザイン性も素晴らしく、注目されています。
フリーの暗号メールとして世界的にユーザー数の多いProtonMailのCEO/共同創設者であるDr.Andy Yen氏も見逃せません。スイスで運用される同サービスを米人気ドラマ『Mr.ロボット』の主人公も使っていましたよね。Dr.Yen氏はジュネーブのCERNでリサーチャーを務めていたそうですが、実はCERN出身の起業家は少なくありません。わたしたちがTOAと共催した2月のイベントでは、CERNとも関係の深い東大東京大学素粒子物理国際研究センターの山下 了・特任教授をお招きして、世界最大の線形素粒子加速器についてお話いただきました。
今回のTOAはAIとブロックチェーンの領域から、多くイノベーターたちを招聘しています。CloudSightのCEO/共同創設者のBrad Folkens氏は、世界初のAIによる画像認識プラットフォーム。同社の画像認識サービスをAPIとして配信し、来るべきAIサービス・プロバイダーの時代を先取りしています。
ダークウェブを監視せよ、部屋中に光を運ぶソーラーIoT、起訴をAIでスマートに
ダークウェブをご存知でしょうか? 通常のブラウザで閲覧ができない深層域のそこには、まさにインターネットの闇。これも先述した『Mr.ロボット』でも描かれていますが、そんなダークウェブの監視プラットフォームがAvi Kasztan氏がCEOを務めるSixgillです。サイバー防衛の専門家が話す内容に興味が募ります。
欧州の女性起業家トップ50に選ばれたDiva Tommei氏がCEOを務めるSolenicaは、ローマを拠点としたハードウェア・スタートアップです。CAIAと呼ばれるイタリアン・デザインによるIoTを用いて、家のどこにでも自然光を照射します。冬季が暗い欧州や都会の採光が少ない部屋で重宝しそうですね。
カリフォルニア州の弁護士でもあるNicole Shanahan氏が創設し、CEOを務めるClearAccessIPは知財とAIを組み合わせたサービスを提供します。実はわたしは彼女の講演をLAで聴く機会に恵まれました。彼女がスタンフォード大学と取り組むプロジェクトは、「スマート起訴システム」。つまり、訴追プロセスにデータサイエンスを用いようという試みだそうです。ちなみに彼女のボーイフレンドは超大物IT起業家なので、その彼にも会場のどこかで会えるかも。
ソーシャルチェンジャー、グローバル企業、元CIA分析官まで
実はまだまだ紹介しきれないほど、ユニークな起業家やイノベーターたちが集結するTOA2017ですが、これまで列記した人たちと挙げきれなかった人たちの傾向から、今年を占うと、やはりAI、ブロックチェーン、セキュリティ、AR/VRの領域からの登壇者が目立ちます。
そのほか、学術的なところでは、オックスフォード大学動物学科からスピンオフしたAnimal Dynamicsなど面白そうです。同社は、動物の行動研究の成果をもとに、高度なマシンの開発を支援する企業です。加えて加齢に伴う疾患を研究をするSENS RESEARCH FOUNDATIONなども登壇します。セキュリティの分野では、CIAの分析官だったYaël Eisenstat氏も気になります。
欧州だけではなく、中東を含むシェアリング・エコノミー企業や創造性に富むクリエイティブ・エージェンシーからの登壇者も少なくありません。さらにアクセラレーターやテルアビブのコ・ワークスペースなど、スタートアップを支える業界からも多数登壇します。また、移民問題、環境問題に取り組むイノベーターたちも一定数います。また、18禁になりますが、スウェーデンのフェミニストにして女性ポルノ映画監督や、世界最大の大麻販売サイトの創設者のピッチも話題になるでしょう。
そして、スタートアップのみならず、グローバル企業や政府からの登壇者も連なります。グーグル、IBM、NASA、ドイツ政府、世界経済フォーラム、BBC、ニューヨークタイムズからも要職者らが登壇。有名ベンチャー企業では、ベルリンのSoundCloud、オランダのWeTransferなどを始め、MeetUp、trivago、HotelTonightほかから創設者らがステージに上がります。
さて、前回に続いて、TOAの多様性に富む登壇者たちのラインナップはいかがでしたでしょうか? 次回はそのほかの見どころについて触れます。
*わたしが代表を務める株式会社インフォバーンでは、TOAオフィシャル視察ツアーを企画し、JTB社と今夏実施します。同ツアーのみでしか行けない会場施設ほか、ベルリン市内にある数々の拠点を期間内に視察します。わたしも同行しますので、もしご興味をもたれた方は、こちらのフォームからお問い合わせください。TOA公式視察ツアー 問い合わせフォーム
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