暗号が未来を拓く ゼロ知識証明やセキュアマルチパーティー計算法など
Berlin Innovation の主任研究員であるElad Verbin氏による講演テーマは、「ブロックチェーンのプライバシー ゼロ知識証明とその未来」。
ゼロ知識証明とは、すごく簡潔にいえば、相手に自分がもっている秘密情報を知られることなく、自分がその秘密情報をもっていることを伝えることです。
暗号通貨では送金者のプライバシーや送金額を知られることなく、その送金を証明するような際に用いられます。
Elad氏は、プライベート・コンピュテーション(個人間の計算 /筆者註 :P2pノードでしょうか)について、上記のゼロ知識証明以外にいくつか手法を解説。特に「セキュアマルチパーティー計算法」(以下、SMC)に絞って話を展開しました。SMCは、暗号化計算(暗号化されたまま演算する)を複数のサーバ同士によって行う秘密計算法のひとつです。
SMCのトランザクション速度については懸念もあるようですが、「ムーアの法則」により、今後の演算速度の向上を期待できるとのこと。加えて、すでに信頼できるサーバ同士のネットワークを織り込むことで、速度向上が果たせるのではないかと話をしていました。
70年代はプライベート・コミュニケーション(個人間の相互運用:たとえば、公開鍵を用いたり、もしくはアクセスの制限など)、そして90年代以降はプライベート・コンピュテーション(個人間における、SMC、ゼロ知識証明、暗号化したまま計算できる準同型暗号など)に遷移しつつあり、両者は異なるものであると説明。
シェアリング・サービスにおいては、特にプライベート・コンピュテーションが重要になってくるとも話をしていました。そして、これら暗号を用いた最新の事例は以下になります……
10月21日から3日間、Web3ファウンデーションが主催するWeb3 Summit(Web3サミット)に参加しています。最近は忙殺されて記事を書けませんが、今回は濃密なプログラム内容の一端だけでも速報できればと思い、簡単にまとめてみます。
まず、そもそもWeb3(Web3.0)とは何か?という説明から入りますが、これについては、ひと言でまとめると、「分散型Web」です。なにが分散型かというと、従来のクライアント・サーバモデルから、ブロックチェーンを基盤としつつ、分散型プロトコルを用いて、下層レイヤーから上層レイヤーの目に見えるアプリまで含めて分散型にしてしまおうというものです。
それによって何が実現できるか? すべてが変わります。たとえば、現在はGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の4強支配による個人データの蒐集とそれによる市場の寡占が注目を集めています。その便利さの代償として、われわれユーザーは自分の情報を管理できていません。今後は集めたデータの扱いに関して、企業が透明性を担保するだけではなく(実現可能かどうかは、最近の相次ぐ個人データ流出事件や元NSAとCIA職員だったエドワード・スノーデンの告発などみると、首を捻るところです)、ユーザーが個人情報を企業側に提供せずに、さまざまなサービスを享受できる方向を目指します。
また、ブロックチェーンを基盤にすることで、途絶しないサービス(企業の解散や買収、災害、当局の規制などによって、そのサービスが中止できない)であること、その運用における民主的な合意形成を目指します。さらに、基盤の上で開発されるDApps(分散型アプリ)と発行されるトークン(暗号通貨)により、独自経済圏と新たなビジネスモデルが構築されるでしょう。
内容については、登壇者のピッチを簡単にまとめたので、そちらに譲りますが、いずれ折を見て詳述したいと思います。まずは、粗めですがWeb3の意味を理解していただき、レポートに入りたいと思います。
開催場所はベルリンのFunkhausという元東ベルリンにあった国営ラジオ放送局です。筆者が日本の公式パートナーを務めるベルリン最大のテック・カンファレンスTOAの開催地でもあり、ここに訪れるのはほぼ4ヶ月ぶりとなります。
旧聞に属しますが、備忘録として書いておきます。9月19, 20日の両日、シンガポールで開催されたCoindesk主催のConsensus : Singapore 2018に参加してきました。
同カンファレンスはブロックチェーン業界では最大級のイベントで、ニューヨークで開催されるものが有名です。今回はそのシンガポール版ですね。
どちらかといえば、暗号通貨に主軸が置かれていますが、先端の開発企業やビジネスマン、投資家が集まるため注目すべきイベントのひとつです。今回、会社がCoindeskから正式にチケット販売を委託されたので、その流れもあって訪問してきました。
印象に残ったのは、電子通貨のアイデアをインターネット前史より提唱していたディビット・ショーン氏の登壇です。
彼のピッチでは、自身の最新のプロジェクト「Elixxir(エリクサー)」の概要を紹介しました。
ショーン氏はインターネット黎明期を知る人にとっては、「eCASH」の考案者として、その名前に聞き覚えがあるかと思います。90年代前半より公開鍵を用いた暗号化による電子マネーを考案した先人です(余談ですが、サトシ・ナカモトのビットコインは、PoWやブロックを形成するのに必要なハッシュやマークルツリーも含めて、過去にあったアイデアを組合せている点が興味深いです)。
登壇中のデイビット・ショーン氏
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2010年にわたしが監修・解説を担当したレイチェル・ボッツマンの『シェア』(NHK出版)は、その後日本でも台頭するシェアリング・エコノミーの教科書として、多くの起業家たちに読み継がれてきました。当時、講演を行うと必ず「日本でシェアリング・エコノミーは流行らない。日本人は他人のモノを使いたがらない」「そんなアイデアを喧伝すると、モノが売れなくなる。けしからん」という意見が必ず聞かれました。だいたい私よりも上の世代か、同世代です。
今から考えると嘘のような話ですが、2010年にはそれが現実でした。そんな『シェア』は2016年に新装版が刊行され、すでに古典となった感があります。そんなボッツマン氏の新刊が『TRUST』(日経BP)です。
今回、日経ビジネスONLINEにて、インタビューを受け『TRUST』の解読を行いました。水平分散化した信頼を礎としたシェアリング・エコノミーの課題、そして、企業と個人だけではなく、国家と個人における「信頼」の在り方について語りました。
すでにお知らせしておりますが、 TOAベルリン2018の公式報告会を開催します!
インフォバーン社とJTB社で実施した『TOA公式視察ツアー2018』および前年度の参加メンバーの方々も含めて、ご登壇・ご歓談いただきます。ちなみに上のイラストは視察ツアーご参加者のご家族によるものです(!)
SXSWとTOAはなにが違うの? ベルリンの起業文化はどうなの? などなど、参加された方々の生の声をお聞きください。また、詳細なTOAレポート資料の配布と懇親会を予定しています。
7月26日19時〜 @エイベックス本社17F
8月8日19時〜@インフォバーンKYOTO 8F
皆さまのご参加をお待ちしております!
TOA(Tech Open Air)18にご参加された方々、おつかれさまでした。
2018のTOAを振り返ってみます。その前に「そもそもTOAってなんだっけ?」という問いにお答えしたいと思います。TOAのアウトラインについては、こちらをお読みいただくとして、カンファレンスとしての立ち位置について説明を試みたいと思います。
全世界で勃興するTOAのようなカンファレンスを、わたしはNew Conferrenceと呼んでいます。スタートアップを中心としたテック・カンファレンスは欧州にもいろいろありますが、それらをまとめて括るのは少し乱暴かもしれません。
かくいうわたしも以前は、そのような独立系イベントのムーブメントをまとめて括って説明したことがあります。しかしながら、どうにも腑に落ちません。Web summitやヘルシンキのSlushやリンツのアルスエレクトロニカと同じグループかと言われると、ぜんぜん違うのですから。Slushについてはスタートアップが多く登壇したり、出展するという共通項はありますが、それでも全体像は異なります。むしろ、バルセロナのSonarなど、TOAに近いかもしれません。
なぜそんなことを考えたのかというと、それぞれの主催者や関係者と話をしていて気づいたからですね。いつも、話をしていてお互いがいかに違うかという話題になります。自分なりにまとめると、異分野横断型(クロスカルチャル)かどうかが大きなポイントだと思っています。
その意味で、SXSWとダイムラーがタイアップしたme conventionは、TOAと同じグループだと捉えています。もともと同コンベンションは本家SXSWのような音楽、映画、インタラクティブと広げてきたメガ・カンファレンスにその源流を見てとれます。
しかし、本家は各分野のレイヤーが重なっていますが、密接に交わっているかというと、そこはわたしの不徳と致すところゆえ、まだ実感しずらいところでもあります。ですので、(a)カンファレンス自体が分野横断しているのか(b)それが何を産み落とそうとしているのか (c)bを生み出すためのサブシステムが内包されているのか? (d)後述しますが、コトが中心なのか、投資や営業が中心か、はたまた人間が中心か否か に着目してみると、おぼろげながらNew Conferenceの輪郭が浮かんでくるのではないでしょうか。
敬愛する福島県のレジェンド起業家・山寺さんに紹介いただいたオランダのBorder Sessionなんかが、まさに自分が考えるNew Conference 像に合致していると思います(参加したことがないので、あくまで推測ですが)。
前回から続けて、TOA2017の見どころのひとつである、ユニークな登壇者の顔ぶれを紹介します。
ダイソンに認められた自然エネルギーのスタートアップ、 誰もが使える暗号化メール、AIによる画像認識機能のAPI
Moya Powerの創設者でCEOのCharlotte Slingsby氏は英ジェームズ・ダイソンが創設したダイソン・アワードの受賞者です。薄いプラスティック製のシートが風力発電を行い、蓄電していきます。即効性の高さやデザイン性も素晴らしく、注目されています。
前回に続き、TOA2017の見どころを解説していきます。
TOA2017の見どころ 3 : 登壇者たちがとにかくヤバい! 空飛ぶ自動車から、人間のサイボーグ化、ブロックチェーンによるスタートアップ投資まで、日本人の知らないスタートアップが一堂に!
毎年、あらゆる領域からユニークなゲストを招き、話題には事欠かないTOAのピッチですが、今年のラインアップが発表されました。その数すでに99名! これからもまだ追加がありえるため、本記事は6月3日時点の人選を基に作成しています。
今回、わたしの独断と偏見によって「この人の話を聞きたい & 会いたい!」リストを挙げてみたいと思います。とにかく人数が多過ぎて全員を紹介するのが難しいため、あくまでご参考まで。ご自身でもチェックすることをお薦めいたします。
未来の交通手段? フライングカー, 中東のプリンスは連続起業家, ブロックチェーンで資金調達可能な市場が誕生, IoTAでモノの経済を推進
わたしが聴きたいピッチのナンバーワンは、スロヴァキアのスタートアップで、空飛ぶ自動車を製造するAeroMobilのCEO/共同創設者のJuraj Vaculik氏の講演です。完全自動操縦も視野に入れて開発中のAeroMobilですが、価格は数千万円になるそうです。
この後も紹介は続きます。
撮影:Christian A. Werner, Funkhaus Berlin, July 2016.
2012年から始まったTOA(Tech Open Air)は、領域横断型のユニークなテック・フェスです。IoT、ブロックチェーン、AI、VR/AR、ビッグデータ、農業、エネルギー、音楽、モビリティ、社会課題、政治まで、さまざまな領域のイノベーションが一堂に介します。開催中には世界中から著名なベンチャー起業家やアーティスト、DJ、クリーエーターたちが集まり、ベルリン市内ではサテライト・イベントも盛りだくさん。バンド演奏、DJイベント、パーティー、あるいはハッカソン、有名企業によるオープンハウスなどさまざまな催しが行われます。
昨今、ベルリンのスタートアップ・シーンに対して世界からの注目が高まるなか、今年のTOA 2017はさらに昨年を上回る規模となるでしょう。ここではTOA2017の見どころを解説したいと思います。