「ハイパー・ディストラクション社会」の到来
2月26日に書店発売される『アテンション 注目で人を動かす7つの新戦略』(飛鳥新社)の解説を書きました。
本書は元『Mashable』のエディターだったベン・パーの著作で、原題『Captivology: The Science of Capturing People's Attention』の邦訳です。昨今、「アテンション・エコノミー」(注目経済)という言葉があるくらい、われわれの日常はあらゆる企業と個人らによる“注意喚起”の営みに溢れています。
ウェブやスマホの普及によって、かつてよりも注目を集めるコストは低くなりました。それにより、人々の耳目を集めようとする情報は、リアルタイムでわたしたちに向かって押し寄せてきます。そこでは、人々は常に誰かが放ったメッセージやコンテンツに“脊椎反射”してしまいがちです。わたしは、そんな社会を「超・注意散漫(ハイパー・ディストラクション)社会」と呼んでいます。
注目は十年前よりもさらに希少資源となっていますが、短命でもあります。常に勝者・敗者が浮沈を繰り返します。ゆえに、注意を喚起し続けることが、より他との差別化を際立たせるわけです。
では、一度注目してもらった後も、どのように注意を喚起し続けたら良いのでしょうか。無論、中身が伴ってこその注意喚起であることは言わずもがなですが。本書の著者は、注目には3つの段階があり、注目を集める方法は7つに集約されることを発見しました。
ベン・パーが発見した3つの注目と7つのトリガー
著者ベン・パーは、現在アーリーステージのベンチャー専門投資ファンドのパートナーを務めています。彼は、ある日気づきます。
起業家が投資ファンドを頼るのは、資金調達ばかりではなく、それと同じくらいに「セコイアやクライナーパーキンス(両者とも超有名VC)が投資した」「シリーズAでいくら集めた」といった注目を喚起させることであると。またそれが「TechCrunch」や「Mashable」などのメディアに掲載され、無名の「その他大勢の起業家」から頭ひとつ飛び出し、さらなる資金、注目、顧客を獲得できるエコシステムをつくり出すのだと。(具体名はわたしが勝手に挿入しました。おそらく著者も同意してくれるでしょう)
どんなに良いテクノロジーをもち、素晴らしい大志を抱えていても、世に知られなかったら無価値なのです。そのために著者は「注目を集める」法則を研究し、その成果をわかりやすくまとめたのが本書です。
著者は、注目には「即時・短期・長期」があると分別し、そのうえで、それぞれに効果的な方法を「トリガー」として紹介しています。
以下、簡単に列記してみましょう。
1)自動トリガー 感覚的刺激に訴えかける
2)フレーミング・トリガー 判断する際の思考の“枠組み”(フレーム)を利用
3)破壊トリガー 相手の予想を裏切り破壊、注目を集める
4)報酬トリガー 行為に対して報酬を与える。無形と有形の報酬を用いる。
5)評判トリガー 相手が注目する際の判断基準に、影響を与える
6)ミステリー・トリガー 謎を用いる
7)承認トリガー 人々の認めてほしいという欲求に働きかける
すべてのトリガーについて、あくまで簡素化して記しています。これ以上の説明は本書をご覧ください。また、上記トリガーはすべてその扱いに注意が必要です。そして、これら7種のトリガーを構成する小さな「部品」について本書ではかなりの紙幅が費やされています。
「部品」を理解することは、トリガーを使ううえで欠かせません。そこでわたしは巻末の解説に、主にマーケッター、PR・広報・宣伝担当者、人事担当者、起業家などに向けて、これら「部品」とトリガーの用い方について述べました。
クリエイティブを変える「自動トリガー」+テクノロジー
上記に加えて、解説文では「自動トリガー」を用いることで、クリエイティブが大きく変わるという可能性について触れました。
現在、人の注目の軌跡は追跡可能なのです。User Heatのようなヒートマップ、最大手トビー・テクノロジーのアイトラッキング、あのバズ・フィードも“秘密兵器”として用いているヘッドライン最適化などのツールが効果的でしょう。
それらを用いることで、アテンションはさらにリアルタイムに調整可能な世界に突入しました。常にアテンションを調整し、人を魅了するクリエイティブはなにかといったヒントにもなればと思います。
版元によれば、冒頭にも書いたとおり今月26日から書店に並ぶそうです。アマゾンではすでに先行予約可能です。
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