10月21日から3日間、Web3ファウンデーションが主催するWeb3 Summit(Web3サミット)に参加しています。最近は忙殺されて記事を書けませんが、今回は濃密なプログラム内容の一端だけでも速報できればと思い、簡単にまとめてみます。
まず、そもそもWeb3(Web3.0)とは何か?という説明から入りますが、これについては、ひと言でまとめると、「分散型Web」です。なにが分散型かというと、従来のクライアント・サーバモデルから、ブロックチェーンを基盤としつつ、分散型プロトコルを用いて、下層レイヤーから上層レイヤーの目に見えるアプリまで含めて分散型にしてしまおうというものです。
それによって何が実現できるか? すべてが変わります。たとえば、現在はGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の4強支配による個人データの蒐集とそれによる市場の寡占が注目を集めています。その便利さの代償として、われわれユーザーは自分の情報を管理できていません。今後は集めたデータの扱いに関して、企業が透明性を担保するだけではなく(実現可能かどうかは、最近の相次ぐ個人データ流出事件や元NSAとCIA職員だったエドワード・スノーデンの告発などみると、首を捻るところです)、ユーザーが個人情報を企業側に提供せずに、さまざまなサービスを享受できる方向を目指します。
また、ブロックチェーンを基盤にすることで、途絶しないサービス(企業の解散や買収、災害、当局の規制などによって、そのサービスが中止できない)であること、その運用における民主的な合意形成を目指します。さらに、基盤の上で開発されるDApps(分散型アプリ)と発行されるトークン(暗号通貨)により、独自経済圏と新たなビジネスモデルが構築されるでしょう。
内容については、登壇者のピッチを簡単にまとめたので、そちらに譲りますが、いずれ折を見て詳述したいと思います。まずは、粗めですがWeb3の意味を理解していただき、レポートに入りたいと思います。
開催場所はベルリンのFunkhausという元東ベルリンにあった国営ラジオ放送局です。筆者が日本の公式パートナーを務めるベルリン最大のテック・カンファレンスTOAの開催地でもあり、ここに訪れるのはほぼ4ヶ月ぶりとなります。
Day 1で印象に残ったセッションは、以下となります。
INRIA(フランス国立情報学自動制御研究所)のHarry Hlpin氏による、ソーシャルウェブは実現するか?というテーマの講演では、現在インターネットで用いられている、人や組織、地域、転送手段、用途に基づいた属性から識別子をつくるURIから、それらを横断しつつ標準構文に近いXRIにするべきと主張。インターネットで採用すべき規格の標準化に一家言をもつW3Cと対極に位置する「民主的」かつ「中央に権威のない」技術を用いるべきであるという。*筆者註 W3CはXRIの採用を否決
Protocol LabのJuan Benet氏
筆者が個人的にとてもわかりやすかったのが、Protocol LabのJuan Benet氏による、Web3.0の理解。Web1.0が読み取り専用、Web2.0が読み/書き可能なものに、Web3.0はそれに加えてTrust(信頼)が加わったものだと同氏は説明。
そして、Web3.0の世界はオープンサービスであると。それはフォーク可能であること(フォークは分岐を意味する)。暗号通貨のハードフォークでは、コインホルダーにとっては必ずしも歓迎されることではありませんが、民主的であるという観点では首肯するところがあります。サービスとしてはどうなのか?という問いも浮かびますが、Benet氏はあくまでソフトウェアにおける構造の問題を扱っているので、違う次元で考えるべき話かもしれません。
ほかに、パーミション不要な参加、インセンティブの設計、価値の独自構築が可能になることを挙げています
そして、同氏の主張をまとめると、Web3.0はブロックチェーンだけを意味するのではなく、それにIPFSなどのプロトコルを含む分散型技術と、リンクされたデータを包括して呼称するのだということです。
彼が講演内で使っていた「そのほかのインターネット」とは、GAFA的な中央集権型モデルを指すのでしょう。おそらく、筆者の推論ですが、彼はインターネットがすべてWeb3.0に取って代わるとは見ておらず、「Web3.0」と「そのほかのインターネット」がしばらくは共存すると考えているのかもしれません。
Web3ファウンデーションのPeter Czaban氏
また、Web3ファウンデーションのPeter Czaban氏のパートでは、クロスチェーンの技術的説明が行われました。クロスチェーンとは異なるブロックチェーンをまたぐための技術で、そのうえで、あらゆるDApps(分散型アプリ)による多様なサービスの展開を実現するものです。ちなみに、Czaban氏は今年の4月にベルリンのTOAと共催したTOAワールドツアー東京2018で登壇していただきました。
Ryan Zurrer氏
最後に、暗号通貨に通じた著名なエンジェル投資家、Ryan Zurrer氏は、Web3時代のビジネスについて言及していました。
1)技術的な多様性をもつチームをマネジメントできるか
2)たったひとつに秀でていること。それが価値をつくる
3)国境をまたいだ分散型組織のマネジメント(タイムマネジメント含む)と、集めたチームと有志による協働を調和させること。
加えてビジネスモデルにインセンティブの設計が含まれることも話していました。
この日はほかにも、AIのためのビッグデータ活用にトークンを用いるOcean Protocol、暗号通貨BTAを組み込んだ広告を表示しない高速ブラウザBrave、分散型メッセンジャー・モバイルアプリのStatusなど注目のクリプト・スタートアップが登壇していました。
一気に書きましたが、まだ初日です(苦笑。とにかく濃いです。記載しきれないことのほうが多いので、またいずれ。
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