暗号が未来を拓く ゼロ知識証明やセキュアマルチパーティー計算法など
Berlin Innovation の主任研究員であるElad Verbin氏による講演テーマは、「ブロックチェーンのプライバシー ゼロ知識証明とその未来」。
ゼロ知識証明とは、すごく簡潔にいえば、相手に自分がもっている秘密情報を知られることなく、自分がその秘密情報をもっていることを伝えることです。
暗号通貨では送金者のプライバシーや送金額を知られることなく、その送金を証明するような際に用いられます。
Elad氏は、プライベート・コンピュテーション(個人間の計算 /筆者註 :P2pノードでしょうか)について、上記のゼロ知識証明以外にいくつか手法を解説。特に「セキュアマルチパーティー計算法」(以下、SMC)に絞って話を展開しました。SMCは、暗号化計算(暗号化されたまま演算する)を複数のサーバ同士によって行う秘密計算法のひとつです。
SMCのトランザクション速度については懸念もあるようですが、「ムーアの法則」により、今後の演算速度の向上を期待できるとのこと。加えて、すでに信頼できるサーバ同士のネットワークを織り込むことで、速度向上が果たせるのではないかと話をしていました。
70年代はプライベート・コミュニケーション(個人間の相互運用:たとえば、公開鍵を用いたり、もしくはアクセスの制限など)、そして90年代以降はプライベート・コンピュテーション(個人間における、SMC、ゼロ知識証明、暗号化したまま計算できる準同型暗号など)に遷移しつつあり、両者は異なるものであると説明。
シェアリング・サービスにおいては、特にプライベート・コンピュテーションが重要になってくるとも話をしていました。そして、これら暗号を用いた最新の事例は以下になります……
最新の暗号技術を使った事例紹介
SMCを使った暗号通貨として有名なZchash以外にも、デンマークの砂糖用品種ダイコンのオークション、そして周波数オークションにも用いられているとユースケースを挙げていました。また、出稿者と媒体社を代理店抜きで直接つなぐ、オンライン広告売買のプラットフォーム AdExもまた、SMCを採用しているとのこと
加えて、ZKPを用いたソリューションとしてQED.it 、準同型暗号を用いたEnigma(MITメディアラボのプロジェクト)などを挙げ、これからローンチされるスタートアップ名も複数挙げていました。
まるで大学の講義のようで、非常に勉強になりました。個人的には90年代前半からPGPと呼ばれるキーエスクロー方式の暗号鍵を用いて署名などしていたのですが、受信者にPGPユーザーがいないので途中でやめた経緯があります(苦笑)。本ピッチはたいへん面白かったです。
しかしながら、一部数式が出てきたり、専門用語の洪水でしたので、完全に理解できたわけではありませんし、暗号の専門家ではないので、本稿に間違いがあるかもしれません。すみませんが、その際はご指摘くださいませ。
HTC EXODUS1予約受付開始と同期するピッチに場内も熱狂
2日目の午前、講演と時を同じくして予約受付開始となったHTCのブロックチェーン専用スマホEXODUS1ですが、まさに同時刻を狙って登壇したのは、HTCのPhil Chen氏です。テーマは出旧約聖書にちなみ、『創世(ジェネシス)から脱出(エキソダス): 最初のアンドロイド携帯から、最初の暗号携帯への旅』です。
リベラル・アーツと暗号技術が交差する講演内容のPhil Chen氏
EXODUS1開発に至る前の長い歴史、というより人類史からはじまるプレゼンは、わかりやすく相当面白かったです。ピラミッドの建設が中央集権型で、それとWikipediaを並べながら分散型社会の到来を淡々と説く姿は、クリプト界のスティーブ・ジョブズのようでした。かっこよかったです。
このChen氏、肩書がDecentralized Chief Officerということで、「DEO(最高分散化責任者)」は、今後流行るような気がします(笑。
その後に行われたWeb3ファウンデーションのGavin Wood氏が登場し、会場はおおいに湧きました。技術的な話がメインでしたが、スターの登場とあって場内に熱気が満ち溢れた気がします。
異なるブロックチェーン同士を各コンセンサス・アルゴリズムはそのままで、すべてでデータの検証や評価が可能となるPolkadotの取組への関心の高さをうかがわせました。
購入して開封したばかりのMacのターミナルを起動して実演するGavin Wood氏
また、この日には4月にわたしたちとベルリンのTOAが共催した「TOAワールドツアー東京2018」にも登壇いただいたTezosのArthur Breitman氏がピッチを行いました。昨日のPeter Czaban氏といい、錚々たるメンバーに登壇してもらえたことを嬉しく思います。
Google Xにも在籍していたArthr Braitman氏
連日数多くのピッチやワークショップが行われましたが、自分が聴講したものや気になったもののみ記載しています。
コメント