なかなか更新がままならず、ここでは最新の活動概況をお知らせしたいと思います。
これまで長らく企業や自治体のイノベーション支援を行ってきました。まだオープン・イノベーションという言葉が流行る以前はCo Creationなどと呼ばれていたころでしょうか。
その時から、さまざまな企業や自治体のCo Creationを支援すべく、株式会社電通とともに「日本のコクリエーション・アワード」を創設し、同時に啓蒙するサイト「cotas(コタス)」というサイトを立ち上げました(現在、同サイトは電通による運営)。
そのうちに、ヘンリー・チェスブロウ氏の「オープン・イノベーション」が世間で認知され、デザインシンキングやUXデザインといったアプローチもだいぶ浸透してきたのではないかと思います。
そんな9年近くに及ぶ活動を踏まえて、今後さらに何をすべきか考えていると、イノベーションを興す手前のインキュベーションに軸足を置こうとという思いが強くなりました。
それまでお手伝いさせていただいた社内外をまたいだプロジェクトの組成とそれ自体のメディア化、あるいはアイデアソン、ハッカソン、アウトプットというものは、すでに粒度が細かくなった状態です。
しかし、そもそもなぜ、なんのために、何を解決しようとするのか、そして、そのイノベーションを通して変えたい未来とはなにか? 実はここがまったく不明瞭なまま、近視眼的なヒットだけを期待したり、その意味も顧みずに「ディスラプション」を唱えても絵に描いた餅になってしまうのではないか、という危惧を覚えます。
和風イノベーションは疲弊者を増やすだけ?
「上からやれと言われた」「ハッカソンばかりで疲れた」「結局、現業も担当しながらで評価につながらないから、やるだけ無駄だし、出世できない」「オープン・イノベーションが定着しない」など、ささまざまな声が周りの企業人から聞こえてきます。
組織が変わらない状態で、イノベーションだけを叫んでも「アジャイル」「コワーク」「アイデアソン」といった表面的なモードは身につきますが、本質は変わりません。疲弊した担当者や社員を量産するだけに陥っていないでしょうか。
そもそも、米国のようなディスラプションを日本企業が本気でコピーしたいのか、わたしはネット黎明期よりシリコンバレーを取材したり、一緒に仕事をしてきた経験から疑問を抱いてきました。
たとえば、マネタイズできずとも、将来の成長期待による時価総額の上昇により、あちこちで波風が起きても「(金にものをいわせて)後から考える」ことでユーザー支持を味方につけるといったモデルは日本では通用しません。
「和をもって貴しとなす」ような日本社会において、ディスラプターはクリステンセン教授が言うところの「無消費破壊」に向きこそすれ、中間業者や既存業態を滅ぼすようなやり方は正直に表立ってやりづらいと言うのが本音ではないでしょうか。
真のディスラプターは自身のビジネスモデルを混沌に陥れることも選択肢とします。上長の気分的なひと言でムードが変化してしまうような組織において、ディスラプションは実は〝水が合わない〟タイプのアプローチかもしれません。
ただし、私は自分の存在をディスラプトするというワークショップ『Think like a Disrupter』を提案しています。それは新たな未来の敵を知り、現業のペインポイントを改善、長所を伸ばすという、既得権益とは無縁なスタートアップ的視座を獲得するという意味でお勧めしております。
そもそもイノベーションを再考してみる
昨年末にキックオフを行なった「Unchained」と言うプロジェクトは、今までわたしたちが行なってきたイノベーション支援をさらにもっと推し進めた活動を実践する機関です。
同時に組織内のイノベーターたちが集まれるサロン的性格を兼ね備えています。今のサイトはブロックチェーンに特化したビジネスハブとしての機能が強調されているきらいがありますが、本来、ブロックチェーンは目的ではなく、それを使って何を生み出すのかが本質的な解となります(サイトは改築予定)。
「Unchained」では、以下の3点が交わる軸で、「社会・未来」をどう変えていくのか、そこをイノベーターたちと考えたいと思います。本記事の冒頭に掲げた図はそれを表したものです。ここで交差する地点を見据えて考えないと、古き良きシリコンバレーのモノマネだったり、先述したモードだけをまとった「流行りだから乗っておけ」では、グローバル・マーケットにアダプトされません。
Unchainedという名前はこれまでの見えない枠や鎖のなかで考えるのではなく、その外でものを考えたり、ほかの業界や専門家たちと混ざっていこう、という意味を込めてネーミングしました。次回は、実際にUnchainedの活動内容をご紹介したいと思います。なお、下の画像は今回開設したサロンのエントランスです。今後、こちらがUnchainedの拠点となります。
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