わたしが生まれ育った町は、かつて都市計画に成功した町として、全国から見学者が訪れるようなモデルタウンでした。しかし、高速道路や新幹線が貫通すると、いままで田畑しかなかった場所が町として栄え、同時にこれまで栄えていたこちらの町は、みるみるうちに没落していったのです……
そんななかでも、まだ生活し、店を営む人たちはいます。なので、町自体がゆっくりと死んでいるかのように見えます。ひさしぶりに帰郷してみると、激しく朽ちていく町を彷徨いながら、痛ましい気持ちでシャッターを切りました。
もぬけの殻となったオフィス。人造の白鳥と、いつの間にか住み着いた鴨しかいない遊歩道。待つ人が誰もいないバス停留所。音楽だけが流れ、まったく人気のない街路。倒産したままの状態で放置された建物……。
町の至るところに、幼少期の思い出が影のように染み付いています。まるで、記憶自体が廃墟になりつつあるのです。そのことは、ひどく悲しも、抵抗しがたい事実なのだと思い知らされるのです。
すべてが完全に消失する前に、写真はそれらの記憶を弔い、「不死」にすることができるのでしょうか。
いいえ。それは、もう手遅れでした。
わたしは幽霊を撮っている気分に陥りました。ここに写っているものは、わたしの心のなかの死んでいった一部です。
撮影はすべてBeLOMO Elikon 535
涙があふれました。
わたしにとっても心のなかの死んでいった一部です。
ありがとう。
投稿情報: koyama | 2009/01/16 14:43
> koyamaさん
ひとつの時代が終わってしまったという気がしました…。このままだと、本当にゴーストタウン化しかねません。かといって、なにか妙案も思い浮かばないほど、朽ちていき方が激しかったです…。
投稿情報: 小林 | 2009/01/16 15:48
いえいえ、これは、夢の跡 未来への発射台です。
一つの思いが終わり、あらたな思いへと紡がれた残り香です。
止まっているように思いますが、いつしか、自然の中に同化して行き、あらたな大地の一部となって行くんだと思いますよ。
投稿情報: warasi | 2009/01/16 16:49
写真を拝見して、
訪れたくなりました、この街
投稿情報: yana | 2009/01/16 23:47
> warasiさん
そうですね、未来への発射台になればいいのですが。でも、まだここで生活している人たちがいるので、緩慢に死を待つ疾患のようで、傍目にはなんとかならないものかと……。
> yanaさん
これはたぶん、特別な町ではないと思いますよ。
日本では高齢化により、商店街のゴーストタウン化が顕在化しつつあります。今回の恐慌も含めて、深刻なこの事態について、われわれ都会にいる人間になにができるのか悩んでいます。
投稿情報: 小林 | 2009/01/19 10:05